25

霜月に入れば寒さは増してき、それに弱い市はひどく外に出るのを億劫がった。
ただ、それでも戦の準備はしなければならないため、十蔵とともに信繁と会議していれば、だんだんと彼らの城が完成していく。

そう、大坂城を守るための鉄壁の城。
篭城戦を決めた大坂がたに才蔵や鎌之介といった戦いに燃えるものたちは怒りをあらわにしたが、それでもうまくいかないのが世の理だ。

戦までは時間があるとはいえない。
トンテンカンとかなづちの音が響く中で市は周囲を見渡しながら己が戦うであろうその場所をうろついていた。

少しだけ高い台にある、銃部隊のための場所。二段構えになっている窓は角度をつけることに適していてさすが考えているのだと思った。


『本当、早いものね。』


たった一ヶ月のたたないうちに骨組みは出来上がってその場所が戦に使われると一目瞭然だ。
ただ、完成するかどうかは真田の家臣たちにかかっている。空を見上げて息を吐いた後、ぐっと伸びをして市はその場から地面に降り立った。


「なんだ、市。一人か」
『あら、才蔵ちゃんも一人?いつもは鎌と一緒にいるじゃない』


その降りた場所の近くに才蔵がいれば彼と合流した形になる。市の言葉に怪訝そうに表情をゆがめ本当に不快そうな態度を示す。変わりようにくすくすと笑いながら市は彼の横に着いた。


「そういや、この出丸は「真田丸」って名前にするらしいぞ。」
『真田丸。信繁様らしいわね』
「あぁ、ノブらしいな」


才蔵からもたらされた情報に、また笑みを浮かべる。「真田丸」。それが謀将真田信繁が生きる場所。
そして、おのれらが使われる場所だ。


「んじゃ、そろそろ交代の時間だ。戻るか。」
『そうね、私も打ち合わせの時間だわ。』


まだ。この後の悲劇を誰も知ることはない


****

/
もどる
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -