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六実と大坂城をめぐり、そうして長屋に帰ってくればすでに十蔵がいて、少し話をしようということになった。
おおよそ咎めだと思ったが、そうではなく、今後の作戦の件や出城についての話し合いだったため少々驚いたのだが人の気配に敏感になっているのは常だ。


「あの子・・・」


月明かりのなかでもはっきりとその後姿を捉えることができる。
何かを考えたのかそのままどこかへ向かい始めた六実の姿を十蔵とともに追うことにすれば途中で佐助に鉢合わせする形になった。
そのまま進んでいけば六実と信繁が偶然出会い、二人はそのまま城の空堀のすぐ南側に位置する小高い山に向かったようだ。


『ここは・・・』
「信繁様が徳川を迎え撃つ出城をここに作る予定なんですよ。」


頭の中で地図を広げてみれば、ここは南側、少し背後には二つの出入り口のあるその場所だ。目の前には篠山。少しそれれば猫間川が流れている。
背は大坂城と天満側、淀川、大和川と考えてみれば背水の陣のような気もするがもともと真田はそういう戦が得意でもある。


「大坂城はどうしようもない伏魔殿だが、ここだけは、俺の城だ。臆病風に吹かれた連中の尻をたたいて、大坂を勝たせて見せる」
「・・・・私も、必ずお役に立ってみせます。何でも言いつけてください」


わずかに声が聞こえるぐらいまで、なおかつ気配が悟られない距離まで近づいていき様子を伺っているが普段と変わらない会話をしているようだ。


「何を言ってやがる。もう、役にたってるだろうが」
「え?」
「飯に掃除に縫い物に、雑用だけしかできないと思っていたが、笛もふけるし、挙句の果てには敵の正体まで暴いちまうとはな。確かに、忍としてはまだまだだが、お前は役にたってる。」


穏やかな笑みだと、市はそう思った。
六実の頭を軽くなでそのまま「これからが正念場だ、頼むぜ、見習い」と彼女に告げた。




「さて、それじゃ戻るとするか」


その後わずかばかり会話をして、風で乱れた髪を軽く直した後に信繁は身を返し、「佐助、十蔵、市。そろそろ出てきていいぞ」と彼女たちがいるその場所に声をかける。
驚いたように振り返った六実だったがそのまま三人が姿を現せばさらに驚いたようだ


「皆さん、いらしてたんですか」
「・・・・当たり前だ。巌流との戦いでは少し見直したが、お前、相変わらず忍としてはまだまだだな」
「気を読むことができても、気配を読むのは不得手なのですね」


顔に驚いたと書いてあると、市は面白そうに笑う。
けれど佐助も十蔵も彼女に対して辛口の評価のようだ、しょんぼりと「面目ありません」としょげてしまう。


『信繁様はずいぶん前に私たちに気がついていたみたいよ。守りたいなら、守れるように努力しなきゃね。』
「・・・はい」








その次の日、大坂へ向けて家康が兵を出したという情報がみなに伝えられた。
10月11日のことだった。


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