初代・雪の守護者についてずっと調べていた。
ボンゴレの中で葬り去られた、悲劇の守護者。

イタリア語で「雪」を意味する「ネーヴェ」の名を持った彼女は、美しく、そして気高い女性だったという。
それこそ、初代ボンゴレボス・ジョットの妹として、守護者たちのまとめ役になっていたほどだった。

…が、守護者と言うには語弊がある。
彼女が活躍していたのはまだボンゴレがマフィアではなく自警団として活動していたころであり、ある抗争に巻き込まれ、彼女は一時植物状態まで陥った。


そうして、数年、眠りに落ちたまま。
彼女の横には常に恋人であった雲の守護者・アラウディがいたという。

元々、初代ファミリーに近いと言われているからこそ、僕と、彼女の関係はそれに近かったのかもしれない。
…いや、そんなことは関係ないけれど。


「(僕は、僕の意志であの子と一緒に生きていきたい。 それだけだ。)」


人ごみのない通路を選んで歩いていく。
ポケットには、彼女に贈りたい約束がある。

この場には、沢田の両親も来ているし、「沢田なつみ」でも「フリージア」でも、僕の傍に置いて共に生きていいきたいというのは変わらない。
それに、沢田はあの子を「身代わり」にしたんだからその身代わりの場所を終わらせるのも、この手が一番いいとおもっている。

こんなことをしなくても、彼女は僕の傍に居てくれると、信じているけれど。


「…?」


足が止まる。
何かが聞こえた気がしてその方向を向けば、この屋敷の中央にある庭園のそのさらに真ん中にある大型の噴水の傍に白。


「…は。」


向こうからこちらは視認出来ないはずだ。
けれど、まっすぐにこちらを見つめる女性と目が合った。

近くのテラスへ出て、そこを見れば確かに「その女性」はこちらを確認しながら庭園の奥へ進んでいく。

あの子じゃない。 あの子じゃないが。






あの人かげは間違いなく「僕」に通じるものだ。






テラスは二階。
そこから飛び降りて着地する。

この庭園は広く、そして夜に人の出入りは少ない。
群れることもないと、よく立ち入っていたからこそ、そこまで彼女がいた場所に辿り着くまで時間はいらなかった。

僕に背を向けた彼女が、あるモニュメントの前で立っている。


「…キミが、初代雪の守護者だろう」


僕の言葉にゆっくりと振り返る。
あの子が同じように年を取って成長していたら、きっと目の前の女性のような美しさを持っていたんだろうと。

懐かしそうに目を細めて、それから、口元に指を当てて静かにするように指示をしていたのがわかった。









「…もうその体は限界です。 生きたいなら手を引きなさい。 フリージア」


聞こえてきたのは、知らない男と彼女の名前だった。


20230703


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