きらびやかな音楽と、いろんな料理。
天井にはシャンデリアがぶら下がり、そして溢れんばかりのヒトを目の前にして、固まってしまったのはそもそもこんな大人数がいるのなんて学校の行事ぐらいしかなかったから。
そっと胸元に手を持っていけば「なぁ」と彼が言葉を告げる。


「俺でよかったのか?」
『むしろエスコートしてもらってごめんなさい。』


10月14日。
それは彼の生まれた日であり、私の生まれた日。

淡い水色のドレスに身を包み、ビアンキさんに大人っぽくメイクをしてもらって、髪もきれいに結い上げた。そこに雪の炎で作った桜のかんざしを。

リングは首に下げて、山本さんの手にひかれてエスコートを受けながら会場に入れば、やはりボンゴレの雨の守護者というだけあって視線が一斉に集まる。元々かっこいいと思うし、雨の守護者としても優秀だから視線が集まるのは当たり前だとおもう。


『山本さん、わがままもういっこいいですか?』
「はは、いいぜ」
『ボンゴレ10代目さん。どこにいますかね。』


だから、早く彼にあってこの場所からさりたい。
それは悟らせないようにそういえば「だな、まずはツナんとこだな」と笑顔をくれたあと、私の手を引いて歩きはじめる。
自然と開く人混みに少し複雑な気持ちになりながらその手に導かれるままに歩く。知らない人間ばかりだ。その視線は痛い。


「大丈夫か」
『うん。大丈夫。』


その視線の多さにさすがに彼も気が引けたんだろう。苦笑いしてそれから目的の場所までまっすぐに歩く。もう寄り道をする必要はない。
ボスということもあってか、一際大きなヒトの固まりに近寄っていけば確かに見えたすすきいろ。
それから


『え?』


記憶の中のヒトより少し柔らかくなった印象を受ける、ヒト。
まず私に気がついたのは、ボンゴレだった。一瞬本当に驚いた顔をしたけど、そのあとに、「母さん、父さん」と二人に声をかけてこちらを促す。

先に振り返ったのは、父で、次は母さん。

二人ともそれぞれの瞳を見開いて私を凝視してる。
そうか、なるほど、これが影武者の意味か。と納得してしまった。


「私」は行方不明であり、その行方不明だった「私」を彼らに会わせたかった。ということだったんだろう。


「なつみちゃん!!!」


だから、あなたはまっすぐ私をよぶんだ。
写真でみた母さんの結婚式のときのようなウエディングドレスに似たタイプの薄いピンク色のパーティドレスを着て、動きにくいだろう。
けれど私の元まで真っ直ぐ走ってきて、その腕で抱き締めてくれる。あぁ、ひどく暖かい。


「ずっと心配してたのよ!何年も連絡寄越さないで!」
『ご、めんなさい』
「でも、本当に無事でよかった。本当に…!!」


泣いてくれてるんだ。私のために、肩がじんわりと濡れていく感触と。それから震える肩を抱き締めれば。次に目が合うのは男の方。
私ににてもにつかない、金髪の。


「ツナから話は聞いた。大変だったななつみ。」
『…うん』


話を聞いた。ということは、私が「私」でないことも知っているはず。なのにわざとそういうのか。
ヒールの高いこの靴のお陰で身長は誤魔化せているんだろうけれど、この腕のなかのヒトの記憶の私はどこで止まっているんだろう。


『ごめんなさい。母さん、父さん。』


親不孝者でごめんなさい。
口には出さず心で伝えたこともある。誰にもばれないそれは私だけのもの。。


「なつみちゃんが無事なら、それでいいのよっ。生まれてきてくれてありがとう。」


じわりと目の奥が熱くなった。たった一言だ。たった、その一言。


『うん。ありがとう、母さん、』


せっかく化粧をしてもらったのに涙が溢れる。
それは彼女もだったらしい。同じように流れる涙に二人で笑ってしまった。


190426




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