ーあぁ、このまま眠ってしまえたらよかったのに。

意識が浮上していくなかでそう思ってしまったのは暖かい紫色の炎に安堵してただの私が出てきてしまったからだ
今だって、私の右手はすごく暖かい。


『……恭さん』
「起きたかい?」
『はい、』


名前を呼んでから彼を視界にとらえる。
ゆっくりと体を起こせば、薄い紫色のカーディガンをかけてくれて、体が楽なように支えてくれた。
本当に優しいヒトだ。


『ごめんなさい。いいつけを破ってしまって。』
「かまわないよ。君が無事なら、ねぇ」
『恭さん。ずっと言いたいことがあったんです』


だからもう浸るのはやめようとおもう。あの人に頼まれてることまであと少し。それが終わったらもう私はここにいる必要はないし、いたところで誰かを傷つけるだろう。

彼の言葉を遮って、まっすぐ、まっすぐに見つめる。


『私、ボンゴレ10代目さんのパーティーが終わったらここをでていきます。』


静かに瞳が開かれた。握られていた手の上から自分の手を重ねて笑顔を向ける。もういい加減にしないといけない。
ここにいるのは白蘭様の作戦のために、ボンゴレに近づくための口実。


「それは君の本心かい?」
『はい。』
「……そう。」


少しの沈黙のあと、恭さんが立ち上がった。
そのままなにも言わないで部屋を出ていきパタンっと扉が閉められる。
たった一人になった部屋のなか。いつの間にか止めてしまっていた息を吐けば、ぐっと体温が低くなった気がして笑ってしまった。

月明かりだけの部屋は、一人にしては広すぎて知らぬ間に涙がこぼれる。けれど、それが氷に変わったのをみて、やっぱり私はあの人と一緒なんだって、そう思った。

だったら、早くと

ベットから降りて素足のままに歩いて、窓に触れる。
空には照してくれる月と空と雲。
そうして静かに雲が月を隠してしまえばもう明かりはなくなって暗い世界。

振り替えればいつの間にか用意されていたトルソーにしっかりとかけられているパーティー用に用意されたドレス。
私が着ていたものとは違ってビーズやレースがふんだんに使われたまるでお姫様のような。


『踊る人、居なくなっちゃったね』


ポツリとつぶやいて、優しくドレスに触れる。柔らかい感触に手を滑らせながら、わらってみせる。
誰も知らないところで、静かに眠ろう。

私はもうボンゴレを傷つけられない。
白蘭さまの作戦には従えない。戻るところもなければ頼る宛もない。

だったら過去の雪の守護者のように眠ってしまえたらきっと一番だ。
誰も傷つけずたった一人で眠って誰も知ることなく朽ちていく。本来そのはずだった私の人生を改めて終わらせるだけ。


その前に、もう一度、


『あなたに会いたい。恭さん。』


大好きな人を瞳に焼き付けてそうして眠りにつければなにも怖くなんてないんだから。



190411




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