あぁ、熱い。
「フリージア!!」
悲鳴のような呼び起こす声に意識が引っ張られた。
じんわりと熱を持ち始めていく体が、違和感だけを残して意識が浮上していく。。
声に答えようとするのに動かない体に一番熱のこもる手を握り返せば、勢いよくかき抱かれて、自分の静かな心臓の音とは裏腹に、うるさいくらいの心臓の音が、聞こえてくる。
…起きなくちゃ…早く。戻ってくる感覚に、やっと目を開けば視界は黒。
いっそ、苦しいくらいの圧迫に、思わず腕に爪を立てれば少しだけ、力がゆるくなった気がした。
『…くる、しい』
「ごめん、でも、もう少しだけこのまま……っ」
ここは、ベットの中だろうか。
思いきり抱き締められれば苦しいに決まっているのだが、ここにいていいと安心してしまう自分は、すこしだけおかしい。
それでも…。
あまりにも、自分の体と彼の体の体温の差が違いすぎて、多分、もうそんなに時間もないんだろうなと、思ってしまった。
それからすこしして、本のすこしだけ緩やかになった力に、体の力が抜ける。彼に限って私を絞め殺す事はないだろうが、切羽詰まっていたのだろうか。
『恭さん。大丈夫ですか。』
「……うん、寝起きに驚かせて悪かったね。」
すこしだけ距離が離れて現状を確認する。
あまりにも、肌色がおおい。固まる私に、不思議そうにした彼だけどすぐに納得したようだ。
「あぁ、ごめんね。さすがにスーツのまま寝るのは寝苦しいから」
『い、いえ、大丈夫、大丈夫です。』
間違いなかった。向かい合った彼は上半身裸。顔に熱がたまっていくのを感じて、枕に顔をうずめれば上から小さく笑い声が聞こえて、むき出しの首筋に吐息がかかる。
『っひ』
「初だね、可愛らしいぐらい。」
そのまま、かぷりと首筋を噛まれた。おかしいくらいに体が跳ねる。いったいこの人は何をしたいのか。そのままかんだあとに優しく唇が這って、軽く肌を舐められる。
『あ、やだ、恭さん。』
声を漏らしてしまったのは、不本意だ。体をひねって彼の目をとらえれば明らかな肉食動物の目をしていた。息をのんで、近づいてくる顔に目を閉じてしまう。
「怖がらせることは、まだしないよ」
けれど、閉じた瞼におとされた口づけと言葉。
ゆっくりと再び彼を写せば瞳に先ほどの獰猛さはもうなくて、優しい色の目をしていた。
さらりと私の頭をなでて、距離をとる。そのまま近くの椅子にかけてあったシャツとジャケットに袖を通した。
そのままポケットから私の方に投げられたケータイをキャッチすれば「20分ぐらいでもどるけど、何かあったらすぐに連絡して。開けば番号がすぐ出るようになってる」と彼は告げる。
「フリージア、君がここにいることが窮屈なら僕が居場所をつくってあげる。だからもう少しだけ待っていて。」
『……はい、』
「うん。いい子」
唇ではなく、額に落とされるキスは、やっぱり溶けてしまうほど熱かった。
190125
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