目が覚めた時に言われた「眠り姫」という白蘭の言った眠り姫という言葉の意味をずっと探していた。
一つは自分が長い間眠っていたからだと思っていた。
けれど本当の理由は、違う。


『壊れかけってそういうこと』


 呆れたように言葉がもれてしまったけれど、振り始めた雨に雨宿りすらする気になれない。広々とした公園の、ベンチにすわって下を向いてしまったのは、それでも計画を続行すると彼に意志を伝えたからだ

でも、その計画だって、参加しなくていいと言われていた。
「壊れかけ」と言われていたけれど、実際、一度死んだようなものだった。止まった時間を無理に動かしている。
そりゃ、無理だ。 何もないところで穏やかに過ごしていれば、多少は生きられるとは思うけれど、それでも些細な差だろう。
でも、構わない。


『どうせ、私は代用品。』


ポツリとこぼして、ひざを抱えた。今だって誰が迎えに来てくれると言うこともない。ひとりぼっちにはなれたつもりだったのに、やっぱり人のぬくもりは心を変えてしまうんだろう。
足りない足りないって、泣いてる。


『------------。』


ポツリとこぼした。
その言葉は空が零す滴によって相殺される。誰に聞かれなくてもいい言葉だ。
それは、それでいいと思ってしまうのはすべてを諦めてしまった己の心の弱さ。あのときも、結局は…歩み寄ることもしないで、全部諦めて手放した。

とりあえず、帰らなくちゃ。
もう足も痛くて脱ぎ去った高いヒールも脱ぎ去って、裸足で歩きだす。

…帰らなくちゃって…


『…あそこは、私の家でも何でもないのに。』


身分証なんてなにもないけど、どこかで誰かが助けてくれるだろうか。
いや、それでもなぁ…。






「っフリージア!!!!」


結局は、他人任せだなぁと、思ってしまったあたりで突然目の前が暗くなる。
なんだとそう思う前にからだが抱き上げられた。あまりの勢いに悲鳴をあげてしまったのだが、その行動を起こした人物は足を止めることはない。
頭からかけられたのがタオルだとすぐにわかったのだが、半ば放り込まれるように車にのせられる。

車の中は暖かくて、私の体温が随分と下がってしまっているんだろうか。


「勝手に外に出たら危ないだろ!!」


バタンっと勢いよくドアがしまってから浴びせられたのはその言葉。
髪が乱れるとかそういうのはお構いなしにタオルでわしゃわしゃされて、視界が開けば声の主である彼…沢田綱吉がいる。一緒に乗っているのは六道骸らしい。なぜ彼が、と思ったのだがおそらく外に出ている綱吉の姿を幻術で隠していたのだろう。

冷静にみた綱吉の目は心底怒りに近い色を孕み、その手も多少乱暴だ。


それは、何に対する心配で…何に対する怒りなのか。


『ごめん、なさい』
「っフリージアは、確かにこの辺に詳しいかもしれない。でも、君が俺たちと関わった時点で命を狙われる可能性だってあるんだ。それに」


それに?
それいじょうの言葉は音にならなかった。
けれど、嫌でもわかったのは、六道骸が心底周りを気にしていることだ。

音にならない言葉は、嫌でも通じてしまうのだ。



彼が、心配しているのは、私じゃなくて、私を通じて、外に情報が漏れること。
人質にされてボンゴレに不利益なことが起きないこと。


『ごめんなさい。ボンゴレの10代目さん』
「っ」


きっと彼にかかれば、いや、彼の手を煩わせずとも、自分は勝手に死ぬのだけれど、仮にもしも彼が恐れる裏切りを自分がしたのなら、きっと彼は自分をあっけなく殺すのだろうなと、


そう思ってしまうのは、すべて、諦めてしまったからか。


あぁ、どうしてだろう。
リングを嵌めてから、周りの音が、うるさい。








×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -