雲雀の言葉が頭にこびりついて離れない。
自分の部屋に戻り、乱雑に広がったままの資料の上に突っ伏してしばらく何も考えず固まっていたのは許してほしいと思う。

昔に比べて大分仕事も速く終わらせることもできるようになったし、彼女を探す時間もできた。のに、先に彼女を見つけたのは雲雀だったのがすこし寂しくも思う。
いや、それは仕方がないことなのだろうけれど。


「なにおちこんでんだ、ツナ。」


そんなうなだれた情けのない男にかけられるのはあきれの言葉だ。
すぐにその言葉に返せなかったのは実際に落ち込んでいるというよりも消沈しているからだろう。
けれど、見つけられなかったことよりも、一番自分が悔しかったのは。


「俺、雲雀さんになにも言い返せなかった」


フリージアは自分の片割れ。まちがいない。自分の超直感が告げた。それは確実だった。確定だった。だから返してほしかった。そもそも自分の家族を見間違えるわけがない、例え、何年たっても。
けれど、雲雀が、彼女が愛していた男が彼女の存在を否定した。あんなにも大切に抱き抱えていたのに。


「俺は、あの子がなつみだってそう思えているのに、わかっているのに。あの子を殺したのは間違いなく俺なんだ。どう話しかけていいのかも、どう接していいのかもわからない。俺は、たくさんひどいことをして、」


実際の彼女を見たとき、正直、嬉しさや切なさよりも、襲ってきたのは拒絶された時の恐怖だった。
実際、自分の言葉で彼女を殺したのだ。あのときの顔をよく覚えている。
彼女が本物であれ、生き写しであれ、その口から憎しみの言葉がこぼれたらと思うと、恐ろしくてたまらない。


「……フリージア、だったか」
「雲雀さんがいうには、だけど」
「ちと調べてみるか。いいか」
「うん。」


リボーンがふと口に出したのは花の名であり、彼女の名だ。
けれど、今の時代。花の名を持つ一人の男が一番のボンゴレの敵である。もしもなんて考えてはいけない。
そんなのただの押し付けだ。

何よりも、彼女はあの日、自分の目の前でそのままその時を止めた。


「とりあえず、あのこの子はうちで保護しよう。そもそも雲雀さんが連れ帰ってきてしまった時点で完全にこっちの世界に片足つっこんだみたいなもんだし。」
「お前がボンゴレ10代目候補になった時にあいつもおんなじようなもんだったけどな」
「……そうだったね。」


そう、だけど俺は見て見ぬふりをした。自分でどうにかできるだろうってほったらかしにした。
なのに俺の知らないところで、それこそ、ボロボロになりながら怯えながら彼女がしっかりと前を向いて立っていたことにも気がつけなかったのだからもうどうしようもないだろう。

ちらりとカレンダーを見る。もうすぐ、秋が始まる。そこが一ヶ月もすぎれば、自分達の誕生日だ。


「リボーン。俺はひどいことをしようって思ってる。」


会わせたいヒトがいる。


190107




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