ともかく、安全なところに避難してろ。と獄寺の言葉にランボはなつみの手を引いて走り出した。
ちょっと雲雀の視線が怖かったが今は彼女を守ることが先決。怯えるよりも随分と高い優先順位。


自分の小さな頃の記憶のなかに、自分が守ろうとしている少女の記憶はほんのわずかしかない。それは、接点がなかったとかじゃない。

思い出しても、ピンとくるのはただひとつ。リボーンから、止められていたのだ。
彼女は部外者で、裏社会の女じゃない。そんな女を巻き込むな、と。
5才の頃はわからず絡んでいたが、それで一度、彼女を傷つけてしまった。それから、自分は彼女に話しかけなくなった。何よりも、あの頃の自分には守る力がなかった。早く大人になりたかった

今は、と考えれば、答えは明白だ。
ほんの数年しか変わらないであろう彼女は、今は自分で命をかけて守ろうと、守れると、そう思う。


早く、早く、安全なところへ------







なつみの目の前に広がったのは、桃色のような、薄い紫色のような不思議な色の煙。
手を引かれていた反動もあってその煙のすぐそばにいた彼女の細い体は簡単に爆発に吹き飛ばされる。
なにが起きたか、と言えば、それこそバッドタイミングとしかいえないだろう。それはきっと10年前に飛ばされた本人が一番感じているはずだ。


「んー、ここはどこだもんね??」


幼い、子供の声。
きょろきょろと辺りを見回してからきょとんっと固まっているなつみを見つけてぱっと表情をほころばせて駆け込んでくる。


「あ!なつみめーっけ!!なになに、今日はお外でランボさんとあそべんのー?」


遊ぶとか、遊ばないとかそういうレベルじゃない。
近づいてくる発砲音に、さぁっとなつみの顔から血の気が失せていく。
ともかく、逃げなければとその考えしか浮かばない。小さくなってしまったランボの体を抱き上げて走り出した。後ろから罵声が聞こえるが、逃げなくては。


「なになに、鬼ごっこ??ランボさんも手伝うもんね!」


日本語で話しかけつづけていることにだとか、彼が10年前に戻ってしまったことだとかを考える余裕はない。今、逃げなければ殺されるかもしれない。


ーーどうして今日来てしまったのだろうかという後悔の方が今の彼女のなかには強かった。
一応、桔梗には止められていたのだ。今日はいかない方がいいと。
それでも、会いたかった。
大好きな人に、会って少しでもそばにいたかった。
たった一ヶ月、されど一ヶ月。死んだと思っていたのにその心がひかれるのはやはり自分を一番に認めてくれた人が大好きだったからだ。
なのに殺されるかも知れない乱闘に巻き込まれてしまった。
あの頃もその恐怖とは紙一重だったけれど。


銃声。
は?と思ったときには遅い。一歩踏み出した瞬間に走る激痛に力が抜けて前のめりに傾いた。腕に抱いていたランボが放り出したのはほとんど反射。
ぐぴゃっとつぶれる音が聞こえたが、己の体に潰されるよりもましなはず。
体を起こして、早く逃げなければと思うのに、足が痛くてうまく動かないことに舌打ちをした。



190106




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