54


幸村さんは後から来た怖い制服のお兄さんと茶髪でぱっつんのお兄さんと一緒に話があるそうでそこでわかれて私は自分の病室に戻った。まぁ、必然的についてくるのは別れた二人のお兄さんたちと一緒にきた丸井さんたちなわけで、むしろ他校の人にここまで知り合いが居るのもびっくりだよねなんて、思ってしまうわけですよ。


「先日はどうも、」


でも、私的にはどうして初対面の柳生さんそっくりな人に挨拶されてるのか全くもって理解できないのが現状であり、丸井さんと桑原さんは「は?」って顔をして私たちを見てる。もしかして柳生さんは双子なんだろうか、いや、双子だったらもう少し似ているはずなんだけど、違うのだろうか、腹違い?いや、にしては似すぎている、とは思うのだけれど…


『いや、私あなたとは初対面のはずですが。』


だから、思わずそう言ってしまうのも仕方ないとは思う。そうすれば、少し驚いたように首をかしげていたが、丸井さんが「なに、柳生とモニカって知り合いなのかよぃ」と質問をいただいたから『この柳生さんとは知り合いじゃない』とだけ返した。

いや、実際この柳生さんとはお知り合いではないのだ。理解してほしい。病室の温度が若干下がった気もするが、目の前の柳生さんはむすっとしてそのまま立ち去ってしまった。なんやねん。


「…今の仁王か…」
『におう?』
「あぁ、柳生のダブルスのペアでな、変装が得意なんだよ」


その去り際はこの前の柳生さんとは似てもにつかず、思わずこっちがはてなを飛ばしてしまったがそれにこたえてくれたのは桑原さんで、変装が得意っていうことに酷く納得してしまった。確かに似るわけだ、ただ魂の色までは返ることはできないから私には一目瞭然だけれど、でも普通の人から見ればそっくり。


「…って、仁王の話はどうでもいいんだよぃ」


なんて考えていれば突然言われた言葉に今度はベット横にいた丸井さんが私をにらんでいた。
睨まれる筋合いはないのだが、おそらく彼的には私がここにいるのが謎なのだろうか。
正論でいれば私だって入院するほどの怪我だとは思ってないし、萩に刺されたときでさえ病院には御厄介にならなかったのに解せなかった。

正直私だって学校に行きたいのだ。そこまで学校大好きっこってわけではないのだけれど私だって学生でありこの調子でいけば盛れなく夏休み前のテストは受けることができないだろう。
私の成績返せ。その前に中1の時点でかなり休んだから出席日数やばいのだよ。今は式に行かせてるけど


『私だって不本意ですから。』


まぁ、彼に事情を詳しく説明する義理はないだろう。個人情報保護というやつだ。

少なくとも仕事だし、私だってそこまで気にしていることでもない。私の答えに、二人は難しげに眉を寄せたが私にはこれ以上話すつもりもなければ怪我をしたいとも思わない。

コンコンコン

少し静かになった病室に響いたノック音。びくっとした二人はちょっとスルーして『どうぞ』と一言だけ言えばガラリと病室の扉が開き、そして入ってきた人に思わず頭を抱えたくなったのは仕方ないだろう。


「丸井君がいるC!!」
「なんや、立海さんもおったんか、先日はどうも」


そこにいたのは芥川さんと忍足さんだったのだ。そしてその後ろにはにこにこと笑顔の萩もいれば、萩に良く似た色の髪をしたこれまたおかっぱの人がいる。大所帯怖い。


「や、モニカ元気?」
『元気だから早く退院したいかな。』
「ふふ、そういうと思ったよ。これお土産ね」


それからするすると当たり前のように傍まで来た萩はそれまた当たり前のように私の手に一つのブレスレットを落とす。緑と白のブレスレットに、すぐに苦笑いしてしまった。


「それ、俺のと似てるな。」
『そうですねー、でも、桑原さんのはほとんど翡翠で作られてるんです。萩がくれたのは、マラカイトとペリドットとホワイトオニキス、かな』
「正解。さすがだね」


魔除け中心のパワーストーン。マラカイトもペリドットも魔除けにはうってつけのものだ。日本名で孔雀石ともマラカイトはいわれていたりするけれど、確かに最近私はいろいろ魔に憑かれてるなぁと思ってしまう。つらい。

でも、気になるのは後ろにいるおかっぱくんなのだ。完全に立海の人たちに敵意剥きだしで、っというよりも芥川さんと丸井さんはテニストークではっちゃけてるし忍足さんは苦笑いしてるし、桑原さんはパワーストーンに興味津々だし、萩は笑ってるしなんだこのカオス
似たような状況この前もなったぞ。「病室で騒いですまんな」と謝ってくる忍足さんがとても常識人に見える。


「そろそろ幸村帰ってくるんじゃないか」
「あっやべ、まじか! じゃ、俺らはいったん失礼するぜぃ!」


そんなときだ病室に設置されていた時計に気が付いた桑原さんが小さくつぶやいた言葉に、ぎょっとして丸井さんが声を上げる。そして病室とは思えないほどダッシュで病室を出ていった。とりあえず仕事の件は聞かれなかったのでナイス氷帝。だがしかし一番怖いのは萩だからきっと聞かれるかな、とか思うけど、萩は笑顔で「おいで日吉」と今まで会話に混ざって来なかったおかっぱ君を呼び出した。そういえば彼には初めて会うな、なんて思う。


「ほら、自己紹介、」


けれど、さすが萩、有無を言わせず彼を私の前につきだした。もしかしたら私が女だなんて、しかも立海と知り合いだなんて思わなかったんだろうか、彼は私から視線を逸らしたまま「日吉若だ。」とぶっきらぼうに言う。

それに苦笑いしてしまうのは仕方ないだろう。


『初めまして、萩の知り合いの龍ヶ崎モニカです。青学の二年生』


まぁ、でも、彼はとり憑かれてるとかそういうのじゃないから、大丈夫そうだけれどどうして彼を私のとこに連れてきたのかが一番疑問だったのだが萩曰く、彼は生粋のオカルトマニアらしい。だがしかし、むやみやたらにそういうのに首は突っ込まないのだが、彼がそういうたぐいのものが好きだと知っている知人から写真をもらったそうだ。

そういうのに詳しいからこそ、不安だったようで、だが自分ではどうしたらいいかわからずつい最近そう言うのにでくわした芥川さんと忍足さんに詰めより、芥川さんは宍戸さんたちを、忍足さんは萩の名前を出し、萩は私の名前を出し、で今に至るわけだ。


『萩、逃げた?』
「俺はこういうの専門外だって」
『確かにそうだけどさぁ…』


萩は捜索と退治専門で、私は祓い専門。確かにそうだけれど、私の言葉に日吉君の目が萩を凝視したのはスルーしようではないか。

精いっぱい萩は気にしないようにしているし、まぁそれを知らなかったであろう芥川さんは「へー、萩もそういうのやってるんだー」とか素直な感想を言ってる。ただ、忍足さんにはあの惨状がよみがえったようで難しい顔をしていたが、まぁ過ぎてしまったことだ。

とりあえず、現像した写真を見せてもらうことにする。本当ならば神社とかにもっていってほしいものだけれど、まぁ、彼に何かあったわけではないからたぶん、何かの警告だとは思うのだけれど、ベットサイドに置いておいたペットボトルをすぐそばまで引き寄せておいて、その写真を受け取った。

写真は、どうやら風景写真らしい。学校の一室だろう。どこの学校かはわからないが、おそらく家庭科室。横からのぞき込んだ萩は「あれ、氷帝のじゃないね」なんてつぶやいた。
ならこの写真の居所はどこなのだろう、と、余計なことを考えてしまったがスルーしておこう。今は写真のでどころではない。


『これ、オーブじゃないかな』


写真のところどころにふわふわと白い光の球のような走っている。俗にいう、浮遊霊なわけだ。でもどうしてそれが家庭科室にたまっているんだろう。なんて思ってしまうが、写真の中にいる一人の少年に対してわらわらと2.3個集まっているのを見るとたぶん彼が引き寄せやすい体質なんだろうななんていうのが印象だ。っていうか、なぜ本当に日吉君がこの写真を持ってるのか気になるのだが、日吉君に視線だけを向ければ「映ってるやつが俺がオカルト好きだと知ってくれた。」とためで言われた。君は二年生か、なるほど。

いやいやいや、普通に人にあげちゃいかんでしょう。なんて、一つため息をこぼすが、また写真に視線を落とす。

ほとんど映っているオーブは白だ。だから特に問題はない。
ただし、


『萩、これどう思う?』
「んー、」


写真の、端っこ。比較的少年よりもはなれたところでその存在を主張するように赤く光るオーブがある。完全に敵意を示しているそれに嫌な予感がしなくもないが、たぶん周りのオーブに守られている状況だと思うから大丈夫だとは思うのだよなぁ…


「強い悪意は感じるけど、でもこれ以上この少年がこのオーブに何かしらしなければ平気だけど、やっぱりうまくはわかんないね。」
『だよね。』


まぁ、要するにこの少年がこれ以上霊を刺激するようなことをしなければなんの問題もないわけだ。うん、何もしなければ、

なんて思ったけど、私はこれ以上この写真にどうにかするわけにもいかない。一番は少年に水でもぶっかければいいんだが、明らかに不審に思われるだろう。写真を日吉君に返し「とりあえずこの少年と連絡がとれるようなら神奈川にある神社にお祓いに行ってもらえばいいよ」とだけ言った。おば様ならちゃんとした対策だってしてくれるだろう。私ができるのはこれくらいなのだ。
何よりも写真からすべてを読み取れというのはだいぶきついものがある。


「わかった」
『少なくとも、私も全部専門じゃないから、できればこれ以上私の名前を広めないでほしいな』


ただ、一言うなづかれたから、これにて終わりにしよう。まずここでやることが間違えだが、ペットボトルの水を一口飲んで念をこめる。少なくとも、私の身は萩がくれたブレスレットが守ってくれるだろう。そういえば日吉君にはいつも配って回ってるミサンガないや、なんて思うけど、萩経由で渡せばいいだろう。そう信じよう。


「なぁ、」


いろいろ考えていたのだが、考えは打ち切られる。萩と二人で顔を上げれば日吉君は少し、子供のような眼で私を見ていた。


「龍ヶ崎は今まで霊にあったことあるのか」
『え、うん。』
「宇宙人は?」
『宇宙人…え?』


そしていきなりそんな話になったのだが、え?宇宙人?ってなに?
後ろで盛大にため息が聞こえたぞ。いや、助けてください。


『んん、私は宇宙人は信じてないけど、でも諸説あるのは動物の進化論かな』


だけど、信じてるもの信じてない物あるけれど、一つ言えるのはこれなのだ。「進化論?」と首をかしげる彼に一つうなずいて、「人間はもとを正せばただのねずみみたいなものから始まったっていうのは知ってるよね」と生物の内容に近いものを話す、
私もこれは言われてすごく納得したのだ。


『人間は手がほしかったから二足歩行になった。便利な道具を開発するようになった。でも、尻尾はいらない。人を傷つけるための爪もいらないよね。いらない物はどんどん退化して捨てていくんだ。逆に必要なものは大きくなる。手とかはそれだね、転んだ時とかものを運ぶのに。じゃあ、今の世界はどうかな。萩はテニスをしてるから必要だろうけど、これから運動が仮に必要なくなったとして、体は必要になる?使わないものは小さくなるよね、逆に脳は仕事とかで使うし、目だってパソコンやケータイを見るのに使うのに大きくなる。指だってキーボードを打つのに長くなるよね。でも音は周囲からじゃなくてイヤホンとかで聞くから小さくなる。そうすると、頭でっかちな体が小さい人間ができるんだ。今、宇宙人と一番近く言われているのはまさにその格好じゃない?』


つらつらと、言葉を並べていけば、本当に驚いたように日吉君は目を見開いたし、「ほぉ」と忍足さんは納得していた。萩は苦笑いだし、芥川さんは丸井さんがいなくなったあたりからうたたねをしているから聞いてないだろうし興味もないだろう。まぁ、聞かなくてもいいのだ。こんなの、ただの諸説なのだから。


「なんや、モニカちゃんもそういうの好きなんやなぁ」
『私は現実主義ですよ、視えるものしか信じないし、ユーフォ―とかぶっちゃけ未来のテクノロジーならできると思う。いつか、過去に行ける日だって来ると思う。でもみるまでは信じない』


クツクツと読めない笑みをこぼして忍足さんが笑うから、私だって苦笑いしてしまう。
一番非現実なのはタイムトリップだ。本当にわけわからない。ただし私の考えのひとつだから少しだけ、考えてほしいなぁとか思ってみたりする。


.



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -