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もちろん、霊に接触しないようにいつもの数珠は持っている。だけど、なんていうかこの風景は酷く心が休まった。

屋上に彩られている花壇。そこには綺麗な花がたくさん咲いている。そんな花たちを眺めながら、今度は空を見上げて、ふぅっと息を吐いた。

こんなにも落ち着いた日は久々だ。最近は氷帝に行ったりしてて電車や時間に終われることが多かったから、とふと考えにしたっていたら後ろからぎぃっと寂れた音が耳に届く。

きょとんとして顔をその方向に向ければそこに居たのは藍色の髪を風になびかせる綺麗な男の人で、私の姿を見て、彼もきょとんとした後に微笑んで、私の隣まで歩いてきた。まって・・・この人・・・凄く・・・変な感じがする・・・


「初めて見る顔だね。君は、何?」


その笑顔は、まるで汚物を見るような、ソレ。いや、ううん、きっと彼が、もし・・そういう人なら・・・。その視線があまりにも露骨すぎて苦笑いしてしまいそうになるのだが、そういう人ならば仕方がないんだろうか…。


『此処の入院患者で、断じて幽霊ではありませんし妖の類でもなければただのちょっと変な人間ですが』


彼には私が、変なものとして見えているんだろう。私の言葉に目の前の男の人はきょとんっとしていた。でもとたんにクスクス笑い出し、私が座っていたベンチの背もたれに手をかけて「隣いいかな?」と私に聞いた。許可を取る必要なんて、ないとおもうけれど・・・でも、とりあえず頷けば、彼は私の隣に座って、相変わらずクスクス笑っていた


「ふふ、おもしろい子だね。」


そして、言われたその一言め。いや、面白いといわれても大分困る。

私はこれが素な訳だから、でも、この人・・・すごく儚いって印象が一番あれか、美人は薄命なのか、こんなこと言ったら失礼だとは思うのだがそう思わざるをえない。本当に、なんていうか…儚いヒトだと思う。


『私は面白いことを言ったつもりは無いんですが・・・』
「ううん、普通なら「幽霊ではありませんし妖の類でもなければただのちょっと変な人間です」、なんて自己紹介のしかたしないよ」
『えー。』
「ふふ、嘘はいけないよ。君、立海大の柳生って知ってるでしょ、それに丸井に桑原も。」


俺、これでも立海生なんだ。と彼は笑った。柳生というので知っているのは柳生比呂士さん。
それから多分、丸井というのは丸井ブン太さんで桑原というのはジャッカルさんのことだろう。・・・そうか、


『変な縁ですね。 っということはもしかして貴方もテニス部ですか?』
「うん、そうだよ。」


くすくすと笑ってしまう。最初の桃君に始まって、つい最近行った四天宝寺、氷帝・・ 全部被っているのはテニス部・・・なんて・・・まぁ他の仕事もしてるけれど…これは単なる偶然なのだろうか…でもこの前の四天宝寺といい、最近はテニスをやってるイケメンさんたちによく会うなぁなんて思うのも仕方がないだろう。視線は痛いけれど綺麗なものは好きだから


「ねぇ。君には視えるの?」


なんて考えていたらそう聞かれた。視える、なんて聞き方するのはさっきの私の自己紹介的なやつのせいだろう。まぁ確かに自殺的行動だが、でも・・この人も視えるから、と勝手な解釈だが一つ頷けば「俺に何か憑いてたりする?」と彼は私に聞いた

・・・あれ?


『貴方は視えないんですか?』
「え、うん。 俺はほとんど視えないよ。たまにぼやーって霧見たいのが視えるぐらい。」
『へ、へぇ・・・』


どうやら墓穴を掘ってしまったらしい。じゃあ、この人もジャッカルさんと同じ自然結界・・・いや、でもそういう感じじゃないこんなに力が強いなら・・・狙われてもおかしくないのに・・・って・・・


『あ、スイマセン。 私、青春学園中等部2年 龍ヶ崎モニカといいます。』
「ん、あぁそうだね。俺は立海大附属中学3年幸村精市だよ。よろしくね。」


でも、寄せ付けない何かはあるんだよなきっとそれとは、また、ちがうあれなんだろうか・・・






「じゃあおとといまで大阪にいたんだ」
『仕事で .ですけどね 』
「その仕事の結果、そんな多い火傷したんだ」


なんだろう…この人、言葉にちょっとトゲがあるきがする…多分…うん、多分だけど…でも、答えられるようには... なってるのよね。一応、四天宝寺っていう事隠してるし...


「女の子なのに... のこったらどうするの?」
『私、どうせ体中傷だらけでし...首のところになんて一生治らない傷跡ありますよ。』


でも、オサムちゃんと同じようなこと言うから… 笑いごとのようにそう言えば、彼はすごく複雑そうな顔をした。きれいな顔が台無し…なんて言ったら怒られるだろうか。
こんな私たちの空気とは裏腹に…空はこんなにも青く澄み渡っている。


「ねぇ…、龍ヶ崎さん…。 龍ヶ崎さんの病室…教えてもらってもいいかな?」
『え…?』
「別に変なこととかじゃなくてね…」


夜になると、不安になるんだ、



弱々しい彼の声。先程までの明るさは、なくて……

ただ明るく振る舞ってようっとして、いただけなんだってすぐにわかった。病気になった人よくある傾向だ。今までの自分がわからなくなって心細くなる。

もしかしてこの人は、難病なのかもしれない…治らないような…難病…。


『いいですよ。 私も病院の夜怖いんです。エヘヘ。』


だったら私が、その背を隠そう。そっと幸村さんの手に己の手を重ねれば、うっすらと袖が濡れていた。きれいな顔とは裏腹にラケットを握っているであろう、この手は皮が厚くてマメだらけで、でも暖かい手、


『だからいつでも来てください。』


そう言って笑えば彼はありがとうと笑った


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