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昔々、とある二人の少年がいました。
二人はとても仲がよくいつも一緒に外で走り回っていました。
でも長くは続きませんでした。
親友だった二人は、引き裂かれることになったのです。
一人は、遠く離れた場所に引っ越さなければならなくなったのです。
二人は別れを惜しみました。
そして少年達が別れたとき・・・
すぐに、残った少年の身体には病が降りかかりました。
その病気は酷く、少年は苦しみ、苦しみ
片腕をなくしてしまいました
少年はスポーツが大好きでした、
でも、みんな少年を哀れむだけでした、
少年は寂しかった、悲しかった苦しかった
そして、そのまま・・・
「隆一」は命を落としました。
それを、遠くに旅立った少年はつい最近知りました
少年は嘆きました。
そして・・・
ある本を見つけました
『オサムちゃん!!』
「うわっどないしたんや、モニカ」
『っねぇ、オサムちゃんが言ってた本さ、やっぱりテニス部の誰かが持ってるのかも!』
「はぁ!?」
バンっと扉を開け放つ。
そうすれば外で胡坐をしていたオサムちゃんが驚いたように私を見た。
もしかしたら、私が言った言葉にかもしれないけれど・・・
「ど、ういうことや!!財前に呪かけたんわテニス部ん誰かっちゅーことかいな」
悲鳴のような、オサムちゃんの声。そりゃそうだろう。
チームメイトが呪を起こしたなんて、考えられないだろう。第一に、本があったとしても、それだけで呪が達成されるわけじゃない。
誰かしら、呪術を知っているものがいなくちゃ成功なんてしない。「誰か」が加担したんだ。
それは、誰か…
『わかんない。だけど一番は、早く本を見つけて、解かないとどっちにしろ、時間が無いっ』
「っせやな、こっちもうまく探してみるわ。」
『お願い、 オサムちゃん』
それは、まだいい。
今は、早く財前君の呪を解くことに専念しなくちゃいけない
『翠銀、お願い。』
【荒い主様だね。】
「お、お前さんなんや神様もどきやんか」
『お、抑えて翠銀!』
【主、一本・・・腕一本だけ・・・っ】
振り返れば翠銀はまだそこにいて、私の言葉にあきれたようにため息をついた。が、やっぱりオサムちゃんが興味を示すわけで、思わずドアをしめてしまった。ごめんね、でもこんなのんきなことしてる場合じゃないんだ。
オサムちゃんに翠銀が言ったことを話せば、しばらく考え込んだ後にさらさらと白い紙に書かれていく陣。
「交霊術の一種、ちゅーことはこれやな。」
そして一通り書き終わった後に、オサムちゃんはそう言ってペンを置いた。まるでこっくりさんのようだと思ったけれど、実際は違うんだろう。
ぶっちゃけこれらの類は嫌いだ。なんの知識も無いのに、自ら災いを招くようなことは、本当に嫌い。
『ふぅん・・・じゃあ・・これを大量コピーね。』
「はぁ!?」
『テニス部員のロッカーに2個に一枚の割合で入れる。分かりやすいようにね』
消去法だ。なんて笑う、
オサムちゃんは「大胆やなぁ」とか苦笑いしているけれど、手っ取り早いほうがいいだろう。
それに知ってる人が見たら多分顔色を変えたりするその人がきっと本をもってる。
それで、間違いない。まぁ、鬼門に近いから不安だが、結界を張れば大丈夫だ・・・多分。
「そりゃ、そうやけど」
『最悪な事態になる前に終わらせる。本をちゃんと取り返してね。』
「…せやな、急がな」
オサムちゃんは明日印刷する予定なんだろうそれをファイルの中にしまっていた。
本も確かに大切だけど、一番は命だから。
【主。】
『・・・見つけた?』
【まぁ、だがかなり厄介な呪だ。 主の身体にも・・・】
『大丈夫、私は平気』
【分かった・・・主の心のままに・・・】
翠銀の言葉に微笑む。もう、大丈夫。もうすぐ、終わる・・・。もうすぐ終わるのならば私はいくらだって協力しようと思う。
もう誰も苦しむ必要なんてない。死んでなお悲しむ必要なんてないと思うんだ。
だから…もう悲しまないんでいいんだよ。
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