44
忍足さんは案外いい人だった、
いや、案外というか、元からというか・・・
ケータイの打ち方から何から、スピードを求める方だという。
そういえば、忍足さん(・・侑士さんのほうだけれど)と少し似ている気がするのは私だけだろうか…。
面白さを求めるところとか(大阪出身だからか?)、変なところで突っ込むところとか(いや、これも大阪だから?)あぁ、でも、髪の色は違うけれど、聞いたら染めたと言われた。
染めてしまったのか・・・もったいない・・・元々何色か知ることはないし、知る必要も無いけれど、やはり、身近な人と似ているということは酷く安心するものだ。
そういえば、目の前の忍足さんはどこで私の・・・基、おば様のことを知ったのだろう。
聞こうと思ったがやめた。いつものことだ、どうせ、風の噂という奴だろう。
大体そうだったから・・・。
「なぁ、龍ヶ崎さん、モニカちゃんって呼んでもえぇか?」
『え?』
「あー、なんかな、従兄弟がずっとモニカちゃんのこと電話で話してきた事があってな、苗字よりも名前の方がしっくりくるんよ」
・・・いや。間違いない。私をちゃん付けで呼ぶのは、つい最近あった人でただ2人。
そして目の前にいる人は「忍足」ということは間違いないだろう。どう考えたってあの人しかいない。
『別に構いませんよ。呼び名くらい。 呼び捨てでもいいですし。』
まぁ、可能性だけだから気にはしないけれど。小さく微笑んで、それから鞄から数珠を出す一箇所だけ大きい数珠がある。それを渡した。
「なんや?」
『一応ですが、なにかあるといけないので・・・』
そうすれば疑惑そうに「なんかってなんやねん」と言葉を発したが『ねんのためですから』と返して彼にそれを握らせた。まぁ、何が起こるかわからない。それほど霊的なことは多いのだ。だから、できればすぐに守れるように・・・
まぁ・・・配るように回っているお守りと同じようなものだけど・・・
大阪に着たのは本当に初めてに近い。東京のように、少し・・・いや、かなり人口密度が高い気がする、
人が多ければ多いほど、霊を探りづらくなる。けれど、財前君は学生だ、だったら、行動する範囲が限られる。
学校、家までの通学路・・・それから良く立ち寄る場所。そして偶然寄り道した場所。
いつもはしないこと・・・
原因はさまざまだがいつもしていない何かしてしまった為にきっかけを作ってしまうこともある。
まぁ、どれが原因かなんて私には分からないが・・・それは、この小指に繋がってる糸が教えてくれる。
『忍足さん。』
「なん?」
切符を通して改札を通って、忍足さんに声をかける。ここからは彼の協力が必要になる。
だって、私はここに土地勘が全くといっていいほどないから。
さて・・・
『学校に・・・四天宝寺中学校に連れてってくれますか?』
早く、終わらせないとね。もうお昼を過ぎて、放課後の時間だろう。
行動する時間が限られてしまっているのだから、仕方のないことだけれど。忍足さんに案内されて学校に近づくに連れて、かすかにだが糸が熱をもっていく気がする。これが近づいているのか・・・それとも離れているのか・・・私には分からないが・・・だが、何か掴んでいる証拠だとは思う。
それにしても・・・相手は何が目的で・・・呪いをかけたのか分からない。
まぁ、呪いなんて、早々目にしないから余計だけれど…もったいないな・・・使い方を間違えなければ・・・まじないになるのに・・・
「モニカちゃん、どないしたんや?」
『え、あぁ・・・大丈夫ですよ。』
「もうすぐつくで」
あぁ、余談。
初めて二人乗りした。
しかも、「俺は浪花のスピードスターいわれてんやで!」なんて、陽気に笑った忍足さんは、容赦なく自転車を飛ばしたから丁寧にお断りした。
私はスピードでなく安心を求めたい。
だってそんなことで怪我したら殺されますもの・・・
ただでさえ、私たちにとって血は危ないのだから・・・
だから、安全にゆっくり行ってもらった。
そして到着したのは、まぁ・・・四天宝寺という名にそっている、大きなお寺。
ここが四天宝寺中・・・だというのならば・・・何かあったのはおかしいだろう。普通にここには土地由来のものか・・・結界のようなものが張ってある。だから・・・呪いなんて類のもの・・・ここで起きるわけが無い。
いや、鬼門が近い…位置にあるけれど…
『(だったら・・・どこで・・・)』
考えが浮かばない・・一体どこで・・
とにかく・・・きっかけだけでも・・・見つけなくちゃ・・・
-