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走って走って、ICカード改札に通す。
それから、階段を二段抜かしで飛んで、ちょうど入ってきた電車に飛び込んだ。危うく乗り遅れるところだったけれど、ほんと間に合ってよかったと思う。
アナウンスで「駆け込み乗車は〜」なんて声が聞こえるけど、そんなこと気にしてたら確実におば様に殺される。私は自分の命のほうが大切だ。
ガクンと動き出す車両。
もう通学ラッシュが終わったのか車内は通勤に向かう数人の人しかいない。
まぁ、混雑するよりかはそれはそれでいいと思うし、人ががやがやするのは正直いろんな念が混ざってるからいたくない。最近電車乗るの多いなぁなんて思うけどそのおかげで空いている席に座ってため息をついた。
例え今から急いだところで集合時間には間に合わないと思うんだけれど…でも、少しでも早く着いた方がいいだろう。
制服のまま出てきちゃったから補導されないか不安だけど、神奈川につけばおば様の神社に行くだけだし、制服も特定されない…だろうから、というか信じて行動しよう。
人気のない道を…ってそれはそれで私が怖い。なにが起こるかわからないしわき道にそれれば霊がいる可能性もある。なるべく避けたい、それはうん。
そう思いながら流れる風景を見つめる。
肌に感じる冷房は、寒い。
ききすぎているのか・・・それとも・・・別のものなのか…。
とにかく気を紛らわせるために、鞄から編みかけのミサンガを取り出す。丸井さんとのことで、本当に実感した。そないあれば憂いなし。あれ?意味が違うかな…。
でも、とりあえず・・・一度、編むのをやめてまた鞄をあさって、一枚の紙人形をだす。
紙人形には紋が書いてある。
私は萩のようにうまくは使えないけど・・・
『(行って。)』
小さく念じながら、紙をフッと吹けばふわりっとその紙は姿を消して、そしてシュっと何かが私の横をとおった。淡い、緑色の光。
『お願い』
小さなキミは、守ることが得意でしょう。まぁ、萩の使い魔よりも全然弱いけれどあの子には守る力がある。守れないのはつらいから、だからなるべくできることはしたい。
『(少しでも・・・時間を稼いで。)』
神奈川に行くまでにはまだ時間がかかる。どうか何もありません様にと思うしかない。
*-*-*-*
神奈川県内に入って、そして、きょろきょろと周りを見渡す。
思ったよりも人が少なくて助かったなぁなんて思うのはちょっとへんかもしれないけど気配を探るのにはちょうどいい。気配は、はっきりしてる。なのに、確認できないって…一体、どこに居るの?
「なぁ、財前、ほんまに大丈夫なんか?」
「・・大丈夫ッスわ」
なんて、考えてたら後ろからそんな声が聞こえて、ふわりっと光が私の肩に止まってスゥっと消える。その光が飛んできた法に振り返れば、そこに居たのは学ランを着た二人の学生。
1人は金髪で、もう一人は黒髪だけど、ピアスを5つつけてる。不良だ…なんて思ってしまったけれど、大阪弁・・・っていうことは・・・
『(この人たちが・・・依頼人?)』
確か、おば様からのメールには、大阪からくるって書いてあったし・・・話しかけても、大丈夫だろうか・・・
なんて思って近づいていく。そうすれば気配に気が付いた金髪の人が私を見た。
「・・自分、誰や。」
見た、というよりは睨むのほうが近いかもしれない。
まぁ、初めて会う人だもんね、誰だってそうなる・・・だけど、チラッともう一人の方を見れば、顔色が悪いし・・・なんか、嫌な予感がする。
『・・依頼をくれた方々ですよね?』
静かに、言葉を紡いだ。そうすれば驚いたように金髪の人は私を見て、黒髪の人はけだるそうに横目で私を確認。「自分、もしかして霊能力者とかか?」なんて、金髪の人に言われたけれどなんで、霊能力者?なんて、固まってしまった。確かにそれに近いものではあったりするけど・・・
ほら、もう一人の人なんてなに言ってんだ、みたいな顔してるし・・・
『えっと・・・一応、』
「やったら、なぁ、財前・・・こいつのこと助けてやってや!俺等、神奈川に着た事なくて、で、助けてくれるように頼んだんやけど、待ってろ言われただけで、困ってんねん!」
間違ってはいないし、とりあえず話を脱線させたくなくてうなずいたら、横にいた彼を差し出した。やっぱり今回は彼が対象者なんだ、とか思いながらじぃっとみる。でも霊的、ではない気がする。
「なぁ、どうにか出来へんか?」
『私は待ってろって言った人の代わりに来たんです。』
ふぅっと一息ついて、一度息を吐いてから、二人を見た。
片方の人は相変わらず不安そうで
『初めまして、私は龍ヶ崎モニカといいます。話は、移動しながらしましょう。あまり、ここにいたら「気」が溜まってしまいますから。』
それからそう言って、二人に促せば、慌てて二人は私についてきた。
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