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とりあえず、鞄に手を突っ込んで、私は念のために持ってきていたミサンガを出す。
桑原さんはもともと持っているから大丈夫だろう、
何も持っていない丸井さんは危ないけど、でも、ないよりはましだしどうにかする。
「あ、それ俺等とおそろいだC!」
「・・そんなに危ないんか・・・丸井・・」
私が取り出したものを見て、目を輝かせた芥川さん。
けれど、逆に眉間にしわを寄せたた忍足さん。
そんな二人に頷いた。
別に危ないというわけではないけれど、どうして彼に死神メールが届いたのか理解ができないのだ、対策を練るべきだろう。私だって万能じゃないから、神様になんて勝てるわけがないけれど…
『私の力は、そんなに強くはありません。 だから、出来れば桑原さんの近くにいることが一番いいんですが、そうも行きません。あくまで桑原さんが払えるのは「霊」丸井さんを襲おうとしたのは、「死神」でも、死をつかさどる神ですから。』
それから私的理論を綴っていけば、桑原さんも丸井さんも難しい顔をする。
いっそ、丸井さんも護身用でお札とか持っていてもらいたいけれど、見えないし何より
相手は神さま。下手なことをすれば祟られるかもしれない。
私は有神論主義だ。
確かに神様はいるとは思うが信じたいとは思わない。
「・・じゃあ・・・どうすりゃいいんだよぃ」
力なくかすかに擦れた声で言われて、手に持っていたそれを差し出す。
そうすれば彼はキョトンッとした。
『出来れば、ウチまで来て、しっかりとお払いをしたいのですが、あまり遅くなってはご家族に心配されてしまいますから。桑原さんにウチの神社に連れて行ってもらうのをオススメします。で、コレは簡易ですが』
そう言って魔よけですよ、なんて言葉を続ければ忍足さんはケータイのストラップのように、芥川さんはジャーン!っと腕につけているのを彼に見せた。いつも身につけてくれているのは、本当にありがたい。
いつか割れてしまうだろうけれど…でも、彼らを守れればそれでいいと思うから。
「・・・お前、いつもこんなことしてんのかよぃ・・・」
『、まぁ、一応』
「・・辛く、ねーの?」
ぐさりと、丸井さんのたった一言が心に刺さった。
『そんなの、わかりません』と言葉を続ければ、丸井さんは悲しそうに視線を揺らした。
当たり前のように、こんなことをはじめていたのだ。確かにほかの人に見えないものを見るのはつらいし、案外怖いものだ。ほかの人とは違う、人間は…特に日本人は自分とは違うものに恐怖を覚えるから。
駅のホームに入ってくる電車を横目で見る。
あれからしばらくあの場にとどまったが、その後解散する流れとなり駅まで来たのだ。
『じゃあ、私たちはこっちなので・・・。』
「おぅ、今日は悪かったな。」
桑原さんと丸井さんにそういえば、桑原さんが私にそう返してくれた。
二人とも、大分落ち着いてきているみたいだ。
それだけは本当に良かったと思う。
「モニカちゃん」
『はい、』
それから、名前をよばれて私自身も電車に乗れば、丁度向かいのプラットホームに電車が入ってくる。それに、桑原さんたちは慌てて走っていく。
「じゃあな! モニカ!」
『 えぇ、丸井さん、しばらくは気をつけて』
でも、一瞬立ち止まって、丸井さんが振り返って私に笑って言った。それに、笑顔で答えれば「さんきゅっ」と返されて彼も笑って、そして電車に飛び乗った・・・大丈夫・・・
『(もう・・・大丈夫・・・)』
プシューっと機械的な音をたてながら閉まった扉に、少し安堵しつつ深く息を吐き出したら忍足さんが「お疲れさん」と私の頭を撫でてくれた。人の少ない電車内を見渡せば、芥川さんはすでに椅子に座ってうとうとしていた。
「とんだ休日になってしもうたなぁ」
『そうでもないですよ。 丸井さんを助けること、出来ましたし』
そんな彼を横目に、私は向かいの席に座れば、忍足さんも私の隣に座り、そう言葉を紡ぐ。
その言葉にそう返せば、「無理はあかんで?」と言われた。無理をしているつもりは、もともとないのだけれど・・・。
「あ、せや、さっき渡せんかったから、受け取ってぇな、」
『え、あ・・・でも・・・』
なんて、思っていたら、忍足さんが持っていた小さな袋を私に突き出した。
多分、さっき買ったペンダントだろう。
私は私の出来ることをしただけだから、コレを受け取る資格は、ない。
「えぇか?もらえるモンは貰わんと、相手にも失礼やで?」
『・・・そうやって、私を惑わせる作戦ですか?』
「なんでやねん。」
『・・・では、ありがたく頂戴します。』
でも、そういわれてしまったら、受け取らないわけにもいかず、
そう言って受け取れば、彼は「肌身離さずもっとくんやで?」とそう言った
どこの恋人ですか・・・。
まぁ、でも・・・
『(これは・・・兄さんに相談かな・・・)』
せめて・・・
これ以上被害者が出ないように・・・
次は・・・誰?
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