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なんじゃこりゃ、と固まったのはきっと私だけじゃないはずだ。ほら、ジャッカルさんでさえ固まってる。
やっぱり、氷帝学園怖いとか改めて思うけれど、目の前に広がる光景に唖然とするのはきっと仕方のないことなんだ。
「モニカちゃん、好きなもんえらんでえぇで?」
『い、いえ、お気持ちだけ・・・』
「せやから、俺の気持ちやって」
目の前にはきらきらと光るアクセサリー。
はっきりいって、おしゃれとか、全然興味ないし・・・なんて思いながらそれらを見る。
可愛いな・・・可愛いけど・・・
『(私にはちょっと、似合わないから・・・)』
思わず目を細めてしまう。キラキラしたものは、確かにきれいだけれど私にはおそらく似合わないものばかり。アレルギーは無いけれど、でも、今思えばアクセサリーなんて全然もってないなぁって思う。
いや、必要ないのだけれど…
「モニカちゃん?」
『え?』
「やっぱ、女の子って難しいなぁ、全然つまらなそうな顔しとるで?」
「なに?忍足お前こいつにアクセあげようとしてたのかよぃ、しかもこんな高級なとこで」
俺だったら絶対無いぜぃ?せめてケーキバイキングだろぃ、なんてついてきたブン太さんが言った。私もどちらかと言えばそっちの方が嬉しいかもしれない、なんて考えてしまった。忍足さんは「そうなん?」って首かしげてるけど、やっぱり金銭感覚怖い。
『あ・・・』
そう思って、視線をそらすようにあるものが目にはいった。
それはシルバーアクセとかじゃなくて、私にとって、懐かしいと感じるもので表情を崩しただろう。「あ、モニカちゃんわらったー」って芥川さんが後ろから抱き着いてきたけどスルーしておこう。
「へぇ、ロケットやん。これ気にいったんか?」
『ただ、懐かしいだけですから。』
「懐かしいって?」
『私のお母さんがつけてたんですよ。』
小さく、わらった。母さんが事故にあった時、無くなってしまったけれど。
母さんは、その年のわたしの誕生日にロケットをくれると・・・言っていたのに・・・。思いにふけっていればいつの間にか、そのロケットは目の前からなくなっていた。
え、っと思って忍足さんを見上げれば、「これにするな、おふくろさんとおそろいってえぇやん」って、笑って、芥川さんも「甘えた方がイイよ〜」なんて、笑ってた。
本当に、金銭感覚ずれてるなぁとか、何とか感じるけれど、そのまま二人は行ってしまった。
こわい…氷帝学園…あれいくらするんだろうか…
「なぁ、」
なんて考えてたら後ろから声がかけられた。
きょとんっとして、振り返ったらそれはジャッカルさんから。
「お前の名前、聞いてなかったよな、俺、立海大附属中の3年 ジャッカル桑原だ」
「あ、俺丸井ブン太な、シクヨロ」
そう言われて、一瞬きょとんとしてしまったが『青学の龍ヶ崎モニカです、よろしくお願いします』と返す。二人の苗字が分かったから、これから苗字で呼ぼう、なんて意気込んで思って私は笑った。
そう思ったらひょいっと私の眼鏡が奪い取られるぎょっとすれば、「あれ、コレ度はいってねぇじゃん。」なんて、私の眼鏡を奪い取った丸井さんが言っていた。
『(本当に自己中だな・・・この人・・・)』
普通、人の眼鏡なんて奪い取らないだろう。
なんて考えていたら、だ。
突然鳴り響いた音楽
ゲッと、そのケータイを持っている張本人は表情を歪ませた。
その音楽は、設定するにはどうなのっていう感じの暗い、ホラー系の音。カチカチと丸井さんはケータイをいじってため息を付く。
「友達か?」
「ばーか、友達のメールをこんなホラーチックなもんにするわけねぇだろぃ?いたずらだよ、いたずら。」
『いたずら?』
そう言って、丸井さんはパタンっとケータイを閉じる。
でも、どうしてだろう、
あのメロディーがなった瞬間、嫌な予感がした。おば様から・・きいたことがある・・
もうずっと昔の事件のはずだけれど…。
『あの・・・』
「ん?なんだ?」
『メール、見てもいいですか?その・・・昔、変な噂を聞いたことがあって・・・』
だから、思い切って聞いてみた。
そしたら「いいぜ?」とカチカチとケータイをいじり、そして私に画面を見る。
「メールすんなって返信しても跳ね返ってくるしよ、悪質ないたずらだぜ?」
『ち、ちなみに何通目ですか?』
「3通目。次来たら、さすがにアド変えようと思ってんだけどよ…」
人のケータイだけれど、彼だってさっき私のケータイを勝手に使ったんだからおあいこだ。さっきまでメール画面を開いていたからすぐに目的のメールを見ることはできたし、おそらくその前に送られてきたであろうメールも見れた。
昨日、一昨日、そしてさっき…
そして、本文には
「564219」
たった、それだけ。
でも、これはおばさまから聞いたこと
だからすぐに分かった
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