030

人生で初めて、空を飛ぶということを体験したが、そう悠長に言っている場合ではないのは理解はしている。。人に視られないのをいいことに氷帝内をただ一人を探してとんだ。

そして見つけて、『萩!』と叫べば彼もまたぎょっとして私を見た。驚く彼に飛びつくことはせず、目の前で止まる。私も、こんなことは初めてなのだ。本当、萩が見える人でよかった。


「ちょ、ちょいまち、って、滝・・・さん?です…か…」
「…忍足?」
「ちょ、嬢ちゃん説明してぇな、滝と嬢ちゃんどんな関係なん?」


なんて思ってたら少し遅れて「私」が来た。
本当、関西弁でしゃべってるなんて・・・ぞっとする。
今日スカートじゃなくてよかった・・・。


「…場所を変えようか、えっと…モニカ…も着いてきて。」


なんて考えにふけっていたら萩が私と、「私」を見て言った…まぁ…彼が「忍足」って言う人だって言うことは分かったよ。萩が言ってたからね。

フワフワと浮きながら、萩たちについていく。・・・自分の身体を見るのって・・・結構変な感じ…





「・・・それでどういうことか話してくれるかな?」


人気の無いところ、といわれ来たのは部室の奥のマネージャー室だと思われるところだった。パタンっと扉を閉めた萩が忍足さんを見てそう言う。

シンッとした部屋でフワフワと浮いて言う私はどうしたら言いのだろうか…。空気読めないとはまさにこのことじゃないだろうか…


「俺かてこの現状については何もいえへんで?聞きたい位やもん」


でも、萩の言葉に忍足さんはそう言った。萩は少し考えつつ私を見て、そして、「モニカもお願いできる?」と私に聞いたコクン、と頷いて、先ほどのことを話す

首に手を掛けられた、と言った瞬間萩の後ろに何か邪悪なものが見えた、満面の笑みだったのに…
っていうか萩は綺麗な顔しているのにもったいない…あれは私の幻覚だと信じよう


「でもおかしいね、モニカと忍足は接点は一度もなかったはずなのに・・・・・・っていうか忍足最近学校も来てないよね、どこに居るの?」


なんて、思っていたら萩はそう言った。確かに萩の言うとおり私はこの人に会った事は・・・ないはず。この前氷帝に来たときも…ってあの時は用事のあった人だけだったしな…でも…何があるとするのだろう。


『萩・・・』
「うん。そうだね、モニカの思ってることと俺の思ってることはきっと一緒だよ」


私の頭の中にある可能性が浮かぶ。ただし、それが正しいのであれば早く本人を見つけなければならないそれは萩も分かっているはずだ。理由も根拠も分かっていない忍足さんは不思議そうにしている。


「なんなん、それ?」
『・・説明すると、長くなるかも知れませんけど・・・。』
「かまへんで?」
「・・・わかった。ねぇ、忍足、ドッペルゲンガーって、知ってるよね?」


そして、私たちの言葉に彼は頷いたから、だからもう一度彼を見た
先に口を開いたのは私。


『ドッペルゲンガーが二重、分身という意味なのはご存知ですよね?そして、あったら近々死んでしまうという怪談話も。』


私の言葉に、彼は首を縦に振った。それなら、と今度口を開いたのは萩で「そういわれるようになった理由を、知っているかい?」と忍足さんに質問する。けれどそれには首を横に振った。

そう、ドッペルゲンガーは怪談は知られていてもどうしてそうなるのかは知られていないし、それが起こった理由も以外に知られていない。


『ドッペルゲンガー…長いので影、といいますね。実は影のことについては、医学でも多少証明されているんです。それを自己像幻視といいまして、私は詳しくはわかりませんけど…』
「脳の相当用途盗聴用の境界領域に脳腫瘍ができたりすると自己増幻視を見ることがあるって言われてるんだ。脳のその領域は、ボディーイメージをつかさどると考えられていてね、以上が出ると事故の肉体の認識上の感覚を失って、肉体とは別の「もう一人の自分」が出来たように錯覚する、なんていわれてるよ。まぁ、あながち間違ってないよね、自分で思っているとおり動けないんだから」


少し難しい話になって、萩が変わりに話してくれた。
医療関係は難しいけれど、これは単なる一例なのだ。


『そして、ドッペルゲンガーは、SF小説にもでてきますね。特定の人物に成りすまして「死の予兆」を反映させ、本人を殺して、周囲の人に知られずにすりかわるってものです。多分、先ほどのよりもこちらの方がよく・・・』
「せ、せや、俺がしっとるのはこっちやで。でも、どっぺる・・・今の俺は?」
『そう、問題はそこなんです。 例を挙げましたが、私たちが言ってる影は、肉体と魂の二つだけ。病気だったり、他者からのなり代わりではないんです。もう一つ例を挙げましょうか、萩お願い』

そして、もう一つ、
命を・・・人それぞれの霊魂を見ることのできる私たちだからいえる影の正体。


「幽体離脱。これも知ってるよね?」
「おん、勿論や。」
「これも実は影の一種なんだよ。まぁ、コレも死に直面するという意味では最初のと似てるけど違う。幽体離脱って言うのは生きている人間の肉体から、霊魂が離れるというとういこと。本人が気がついていなければそれは目の前に同じ人間、つまり自分が居ることってなるだろ?」
「せ、せやな。」
「そして、具現化、つまり人に見えるほどそれが長くなればなるほど、自分の身体に戻るのに負担はかかるし、肉体と霊魂が長く離れれば離れるほど、命が危なくなる。」


そこまで言って、再び萩が私を見た、ここからは、私にということらしい。
頷いて、忍足さんを、「自分の体」を見た。


『ここまで言えばきっと分かりますよね 今の私は霊魂の状態で、そして忍足さんも肉体と、霊魂は離れている。つまり、お互いに早く自らの身体に戻らないとまずいってことです』
「まぁ、本当に簡単に言うならね。忍足、自分の体がどこにあるか、分かるかい?」


そして、私、萩と言葉を続ければ、忍足さんは考えるようにして、けれどため息をついた。


「わからへん、気がついたら、俺は部屋で一人やったんや。家族にも気付いてもらえんくってな、変になりそうやったわ。」


忍足さんの言葉に、私は再び考える。私は、人や、物を探すのは苦手だ。その術を知らない。でも、早くしなくちゃ、と焦る考えを、練り始める。


「モニカ、捜すだけ、捜してみるよ。」
『萩・・・』


だけど、あぁ、そうだ。萩は、「風」を操るから・・・
私に優しく微笑みかけると、萩は忍足さんの手に一枚の紙人形を置いて、


「¨捜せ¨」


ふわり、
萩の言葉に忍足さんの手の上にあった紙人形がひとりでに浮き上がった。「おぉ」っと小さく驚いたらしい忍足さんだったのだが、瞬間飛びあがった髪は窓を突き破って外に飛び出していった。
静かな沈黙が私たちの間に流れるのは不可避だ。まさか割るとは思わなかったのだから仕方がない。



「・・どないするんや、その窓。」
「どうにかするよ、跡部がね。」
『・・・いいの、それで・・・?』

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