026

私のように力のある人間には、二つのパターンがある。
一つ目のパターンは生まれた時から、力がありそれを受け継いでいく血筋。

私や、兄さんはおば様から、その血筋をいただいて、育った。けれど、私の力は兄さんに比べれば、全然弱かった。


二つ目のパターンは、突然変異。
小さい頃に妖怪や、悪霊、力の強い者が見えていたとして、例えば、目の前でそれに大切なものが奪われたとき力を開花させたもの。


私の力の「開花」は、こっちに当てはまる。
そして、目の間に居る萩は後者の一人だ。

彼は、3年前、
私が5年生、彼が6年生のときに、妹を失った。


後者の者は、力を無理にでもつけないと強い霊やその他に襲われる。だから、「武器」という選択を取る。

彼の武器は「剣」そして纏った力は風









萩はビショビショになった彼らに「はい」っとタオルを渡すとどこかに行ってしまった。
私はあって間もない二人のもとに取り残されてしまったのだ。激しくデジャヴを感じる。
手塚さんたちの時もこんなんじゃなかったかな…

萩には悪いが・・・ついていきたかった。


『・・・いきなりごめんなさい』


いくら彼らの周りに・・・いやいや・・・予防線としてだけれど・・・
突然、水をかけたのは私だから。
だから、一言謝って頭を下げた。


「いや、やっぱ滝が言ってたのは本当なんだなって思ったぜ。」


そうすれば私の言葉に髪の長い男の人が言う
赤い髪のひとはムスッとしたままだけれど、髪の長いほうの人は笑っていた。


「そういや自己紹介がまだだったな。この学校の三年、宍戸亮だ。」
「・・・向日岳人。」
『はい、先ほども申し上げましたが、私は龍ヶ崎モニカと申します。』


名を再び名乗ってからペコリ、と彼らにもう一度頭を下げた。髪の長いほうの人が「宍戸」さん、赤い髪の人が「向日」さん。

よし、覚えた、たぶん。


「はは、もっと力抜けよ。先輩後輩だけど、俺らの頼みごと聞いてもらってんだし。」


そうすれば頭が撫でられる。顔が上げればまぶしいくらい爽やかな笑顔とご対面で、
サワ・・・

優しい風が吹いた。


『・・・ありがとうございます』


だから私も笑う。
やさしい風の原因は、きっと萩。

萩は優しいから…


それから、宍戸さんと向日さんに今回のことを聞いていた。
幼馴染である友人が、ある日をきっかけに様子がだんだんおかしくなりどんどん弱っていったこと。
しまいには起こしても起こしても、ずっと眠っているような状況になってしまったこと。

さすがにおかしいと思って病院に連れていったが単なる疲労だと追い返されてしまったこと。

これ以上、そんな友人を見ていたくないこと。
そんな話を聞いていてどれくらい時間がたったのだろう。柔らかい風が吹き、そちらに視線を向ければ、にこりと微笑んだ萩の姿。


「お待たせ、跡部に許可貰ってきたよ。」


柔らかい髪を風に揺らして彼は戻ってきた。
何の許可だろう、と首を傾げる私、
それは横に居た宍戸さんたちも同じだったらしい。


『萩、なんの?』
「モニカは一応外部生だからね、俺の大切な妹が来てるから宍戸と向日を借りていくよ、って言った。」
『・・そう、妹・・・ね』


「妹」それは萩にとって重要なワードでもあるだろう。
それは「兄」を失った私にも当てはまることで、表情を曇らせてしまったらしい、
萩に「嫌だったかい?」と首を傾げられフルフルと首を横に振って『ううん、平気』と返した。
お互いに、かけたものは一緒なのだ。


『・・・えっと・・・芥川龍之介さん・・・だっけ・・・』


そういえば、目の前にいる萩はキョトンッとして、後ろに居る先輩方は大爆笑。
え、っと思って振り返れば、向日さんがひーひー言いながら「どこの作家だよ!!」と笑っていた。

・・・あれ・・・


『違った?』
「うん、正確には芥川慈郎だよ、」


キョトンッとして萩を見れば、クスクスと笑いながら萩は教えてくれる。
芥川・・・慈郎さん・・・ね。
あ、だからジローか…なんて改めて思ってしまった。


『(どんな人だろう・・・)』


でも、どうか、間に合って。
なんて思うのは私のただの偽善かもしれないけれど…

私に救えるならば救いたい…
願うのはただそれだけで…

彼のお昼寝スポットらしい場所へむかった。





けれど、私が見たものはある意味、酷いものだった。萩も目を細めてる。ずっとずっと萩はコレをみてたんだ。


「どうした?」
「ごめん、宍戸、 モニカ驚いてるだけだから気を悪くしないで」


呼ばれたけれど、反応できなかった。それに萩が変わりに謝罪を入れてくれる。
私だって、ここまでひどいものは見たことなかった…。

じぃっと彼を見る。まとわりつくように軽く・・・20超えてる動物たちが彼にへばりついている

小さな動物霊も集れば危ない。
っていうか・・・本当にこんなに集ってるの・・・はじめてみた・・・。でも・・・なんで?
確かに、この人は憑かれやすい体質だけど、コレは酷い・・・


「モニカ」
『ッ!!』
「大丈夫?出来そう」
『あ、う・・ん・・・』


ポンッと肩に手を置かれて集中しきっていた私はビクリッと肩を震わせた後ろに居たのは萩。
そして、奥にいる不安げな表情な宍戸さんと向日さん。


『・・・確かに、コレじゃ萩の手に負えないね。』


小さくそういえば、「うん、俺にはね。」と帰って来る。でも、この量は確かにつらいものはある。


『萩、手伝ってくれるよね?』


静かにそう聞けば「もちろん」と帰ってきて、ホッとした。
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