025

『もしもし・・・あっうん、私。え、ごめん部活中だった? あっまだ始まってない?』


放課後。連絡来たあたり、急いだ方がいいと思った私は氷帝にいる幼馴染に連絡していた。そうすれば、部活がもうすぐじゃないかと一瞬あせったけど、まだ部活は始まっていないと聞いて安堵のため息をついた。さすがにそこまでして電話しちゃいけない。さて、本題だ


『それはよかった。あのさ、お願いがあるんだけど・・・ え、あぁ、それそれ、え?私の連絡先教えたの?…別に構わないけどさ・・・びっくりした。 うん、今日行く予定だよ、うん、うん』


なんて思いながら駅のホームを出る。氷帝学園の道はここから知らない。ちなみに言えば私は青学の制服ではなく、仕事服。

当たり前だが何がおこるか分からないからせっかく新しくした制服を汚すわけにもボロボロにするわけにも行かないし、どっちにしろ仕事道具を揃えなくちゃいけなかったから家に一度帰ったのだ。まぁ、問題はここからなのだけれど


『うん、今駅に居るんだけど・・・氷帝ってどこ?』


極度の方向音痴というわけではないが氷帝学園には一度も行ったことはない。だからそう言ったら、奥から盛大なため息を疲れた。仕方ないじゃん、とか思いながら改札を通り見慣れない街並みに目を細める。


「おや、お困りですか?」


そう考えていたら、目の前に人が現われた。現れた、という言い方はちょっとあれかもしれないが、でも、電車を出てからケータイを使いっぱなしで用件まで言ってるから気になったんだろうか…

制服を着ている限りどこかの生徒・・・もしや・・・氷帝の生徒?かと思ったが制服のポケットについているワッペンは「R」
氷帝はなんかすごくこまごました校章のはずだから違う。


【誰か居るの?】
『えっと・・・知らない。』


でも、電話の奥にまで聞こえたのか、少し警戒するような声。だからそういえば、ニコリと目の前の彼は微笑んだ。
すみれ色の髪は七三分け。眼鏡の奥はハーフレンズなのか見えない。でも、優しげのある人。


「失礼、私も氷帝に行く予定があるのでよろしければご一緒しますよ。」
【あー・・わかった、モニカ、その人についていって、絶対離れたらダメだよ。】
『了解。』


これも電話の奥に聞こえたらしい。目の前の人の声で彼はその人物が誰か気が付いたようだ。つまり知り合いなのか…


『えっと・・どなたが存じませんが申し訳ありません』
「いえいえ、困ったときはお互い様だというじゃないですか。あぁ、申し後れました。私は立海大附属中学の柳生と申します。」


ペコリ、と頭を下げれば彼は笑顔でそう言って私に微笑んだ。
あ、名前、と思った私も『青春学園中等部に通ってます、龍ヶ崎といいます』と伝える。そうか、立海の「R」か、なんて納得。

そもそもおば様からは立海に入れといわれていたんだ。でも私は神奈川の学校に入る気はさらさらなく、こっちに来た。

理由はいろいろあるのだけれど今回は割合しよう。今は今の仕事が大切だ。「行きましょうか」と彼が言ってそれにうなずいて歩き始める。それにしても手塚さんや不二さんを見てて思うけどこの人もなかなか身長高い。いや、ただ単に私が小さいだけかもしれないし、男と女の差なのかも知れないけれど…それでも羨ましいとおもう。


柳生さんとはいろいろな会話をした。
学校のこと、それこそ私が二年生だから勉強のことだとか、進路のことだとか…
下手に沈黙が続くよりも心地よかった。


『へぇ、すごいんですね、全国2連覇なんて。』


でも、柳生さんの話を聞く限り本当にすごいと思う。今は部活の話で、彼は桃君たちと同じ硬式の方のテニスをやっているらしい。そして立海は男子テニス部強豪校だそうだ。
なんたって、全国2連覇。テニスをやっていない私にはどれぐらいのレベルでそれなのかわからないが、すごいと思う。


「いえ、我々は常勝を掲げていますから、これぐらいまだまだです。」


ほら、こういう風に彼は自らを謙遜する。ナルシスト、というわけではないが、謙遜しすぎるのはどうかと思う。私はただ純粋にすごいと思ったのだから


『でも、誇れるものがあるっていいですね。私は・・・ないから。』


でも、彼にはとてもすばらしいものがある、私には傷つけるものしかもっていないから、とても羨ましい。あの時も、なんて考えて悲しくなってしまう。


「そうでしょうか?」


けれど、柳生さんが言った言葉は私を驚かせるものだった。顔を上げて柳生さんを見れば私にむかって柔らかく微笑んでいた。


「貴方は、とても魅力的だと思いますよ。私に誇れるものがあるように、きっと貴女にも誇れるものがあります。自信が、一番ですよ。」


そう、私に言ってくれた。そのまま歩いていけば、見えてきた大きなキャンパス。私はその大きさに何とも言えない気持ちになったが横にいる柳生さんは当たり前、というように見上げ、眼鏡のブリッジを押し上げる。


「では、参りましょうか。」


彼の言葉に頷いた。そういえば彼の目的もテニス部なんだっけ





柳生さんはテニス部顧問に用事があるらしく、途中でわかれ一人になった私はケータイを手に取る。
発信履歴から彼の名前を引っ張り出して、かけた


1…


「もう着いてるみたいだね。」


1コール目と、和風な音楽。聞こえてきたのは私から少し離れた場所。その音のほうへと視線を向ければ、その人物が私に向かってケータイを持つ手を振っていた。


『この間ぶり。萩。』


柔らかい・・・髪質は多分、不二さんに似てると思う。片目を前髪で隠して、いつもどうり微笑んでいる。用件のなくなったケータイの呼び出しをやめて、ポケットに突っ込んで、彼を呼んで、近寄った。


「うん、この間ぶり。やっぱり、その格好できたんだね。」


やっぱりスカート短すぎる気がするな、なんて、笑って言われた。
安心して、この下ちゃんと着てる。なんて短く会話。萩は同業者だ。私とは少し、タイプの違う…だけれど…「とりあえず、依頼者を紹介しようか」なんて萩は言って歩き始めたから彼の後に続いて私もあるきだした。歩いて歩いて、そして見えてきたのは最近よく目にするようになったテニスコートだ。


「宍戸! 向日!」


それから、萩は二人の名を呼んだ。え?キョトンッっとしている私とは裏腹に、コート内の髪の長い人と赤い髪の人が振り返る。彼らが、「宍戸」さんと「向日」さん。依頼人。
私は視力はそれほど良くないが彼らがこちらに来ているのがみえて、思わず萩の後ろに隠れた。柳生さんと居たときはずっとカラコンを入れていたけれど、さっき萩に会う前に外してしまったから、今の私は周りから見れば異端。
私の瞳は、「呪」われているから。


「どうしたんだ?」


先に話を始めたのは髪の長い男の人だった。後から来た赤い髪の人は私をじぃっと見ている。同じ部活の仲間が見知らぬ人を連れていれば気になるのだろう。


「ジローのこと、解決できる子。」
「「!」」
「今日、メール送ったんだろ?で、返信があったはずだ。来てくれたんだよ、ちょっと遠くからね。」


ほら、出ておいで、と彼は私を呼んだ。ジロー、というのはきっとメールに書いてあった友人のことだろう。私には確かなことはまだ分からない。
でも、唯一ついえるのは、


『・・・青春学園、二年の・・・龍ヶ崎モニカです。』


この二人も、これから助ける人も萩の大切な友人だって言うこと。
だから少し彼の背から顔を出してそういえば、赤い髪の人はむっとしていた。
でも、この二人・・・ソッとあいている手でバックに触れて、聖水を手に取る
萩の後ろで何かしている私を不思議そうに見ている彼らに、「あ、やっぱり?」と萩は苦笑いをしていた。

軽い音をたてて開く栓。
私はそれをそのまま

パシャ


「うわっ」
「なっ」


目の前の二人にかけた。「はは、モニカやるねー。」なんて萩は笑うが、私だっていきなりこんなことをしたから怒られるのは覚悟の上。ごめんなさいと心の中で謝罪しておこう。


「クソクソ!いきなりなにすんだよ!!」
「・・・」


片方は思っていた通り怒り、片方は黙った。
見ず知らずの女子生徒に、しかも年下にこんなことされたら誰だって怒るはずだ
怒らない人がいるならば会ってみたい。けど、彼らはとりあえず、大丈夫かなとひとまずは安心した
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