013
昨日よりも早めに学校につく。
早い時間、といっても部活が始まっているところは始まってはいるのだけれどね…、
昨日同様黒一色の私だが、登校してまっすぐに職員室に向かう。
職員室を覗けば、確かに先生は少ないがちゃんと私のクラスの担任はきていて、私を見つけて手を振った。ノックを三回。
それから『失礼します、』と小さく一礼してから職員室に入り、私はその担任の場所に向かった。
担任の足元にはダンボールがあり、張ってある紙には「女子制服一式、 体操服4点セット2式 鞄 運動靴 etc」とか、書いてある
最後のetcの意味が分からない
あと何はいってるの・・・
『おはようございます、先生』
でも、とりあえずあいさつをした。
そうすれば「あぁ、おはよう」と返って来て、そしてその箱を見る。
「いやぁ、朝早くに悪いね。これ、教材とかも入ってるんだが大丈夫かい?」
『はい、わざわざすいません、』
それから軽く挨拶を交わして、私は箱に手を添える。
教材やらなにやら入っている分重いだろうが、私には人とは違う力があるからまぁ大丈夫だろう。
なんて、考えてみたのだけれど、先生がふっと視線を向けて、息を吸った音が聞こえて「おい、越前!」と、誰かに声をかけた。
・・・越前?
その名に少し固まったが、振り返ればその人物はムスッとしたままこちらに来てそして私を見て私どうように固まった。
「ちょっと荷物を運ぶのを手伝ってやってくれ、転入生の龍ヶ崎だ。」
「・・・いや、俺部活あるんスけど」
「今からいったって間に合わないだろ?だから口実にこれを使えばいいじゃないか、さっいったいった!」
っていうか、先生がおかしいと思う。
なぜ部活に行こうとしている生徒を捕まえて他生徒の手伝いに回すのか…
なんと横暴な…
でも実際、私も私で着替えなくちゃいけないし…
これはお言葉に甘えたいんだけどね…うん。
なんて脳内会議をしている間に先生は箱から新しくなった教科書たちを越前君に持たせてた。
行動が早い。
とりあえず苦笑いして、越前君と共に職員室を出て、とりあえず『ごめんね、』と彼に声をかけた。
彼は「何が、」といっていたけれど、
『荷物運び、部活でしょ?』
「・・・別に」
そういったら、彼はむすっとしたままそういった。本当昨日からこの子はどこかつんつんしてる。
いや、実際私結構他人だから仕方はないんだけれど、私の後について階段を上る彼の役目はもうすぐ終わるんだろう。
これを終えて、部活にいったら彼は怒られる対象になるんだろうか、とちらりと職員室でみた時間について考える。
たぶん、朝練が始まったのは5分ほど前のはずで、
HRが始まるのが8時30分。これらを運び終えて彼が向かえば8時丁度ぐらいになるのかな、とか理不尽だな。とか思う。
そんな中途半端な時間に放り出された方が越前君にとって迷惑だろう。
・・・だったら
『越前君、朝練習サボる勇気ある?』
「は?」
今から話してしまったほうが私的にはいい。時間もちょうどいいだろう、と思う。
そこまで長い時間はいらないし…彼にとっても謎は早く解明できたほうがいいだろう。
とりあえず、私は制服に着替えなくちゃいけないから彼には少し待ってもらうことになるが、
『昨日の話、聞きたくない?』
とりあえず、声はかけておく。ちょっとずるい言い方かもしれないけれど、彼は少し考えて「話してくれんなら」と、返答した。
彼も彼で、気になりはするんだろうなぁ、とか…
そう彼が言ったのは3階に到着したときだった
*-*-*-*-*
「・・・なんか似合わないね」
彼の第一声はそれだった。
いや、少なからず私もトイレの鏡で自分の姿を見た瞬間に、おんなじことを思ったけれど…
『うん、パステルカラーがこんなに私に似合わないとは思わなかった。多分去年の私の方がもっと似合わなかったと思うよ、暗かったしね。』
とりあえず、苦笑いして屋上のフェンスに寄りかかる。
下からはいまだ部活に汗を流している先輩、同級生、後輩が居る。
その声も聞こえてくる。
きっと、桃城君の声もその中に含まれるんだろう。
はっきりいって私からいう後輩という存在は居ないはずなのだが。
まぁ、越前君はうまくコートの死角に居るし、やっぱりまずかったかな、と少し後悔したが、いいのだろうか、
桃城君には一応話しておくが、
「で、なんなのさ」
『越前君、最近病院とか行かなかった?廃墟とか』
「・・・・病院ならいったよ、近くだけどね」
なんて思いながら彼にそう聞けば簡潔にそう言った。
近く、か
まぁそれでも、憑く霊は憑くしね・・・
でも、どうして、今なんだろうなぁ…なんて思う。
けれど彼は怪訝そうに「それがなに?」と、首を傾げた。
まぁ、昨日の経験はあろうともいきなりそんなことを言われれば少なからず疑問には思うだろう。
実際に言えばここからが勝負。
『越前君は、幽霊とか信じる?』
私は思わず苦笑いだが、そういえば彼は眉間にしわを寄せた。
でも、私は正しいことしか言うつもりはない。
ぶわりと風が吹いてなびかせていく。
『信じられない話だろうかも知れないけれど、私には彼らを見たり、払ったりすることが出来るの。君はそれに取り憑かれてたってこと。』
だから静かに口を動かす。
下から聞こえる声とは全く違うはずなのに、私の声はリンと空に響いた
『信じなくてもいいよ、とりあえず知っていてほしいだけ』なんていって笑って見せる。
「ねぇ、何か勘違いしてない?」
そんな私に聞こえたのは越前君の不機嫌な声だった。
キョトンッとして振り返れば先ほどよりも柔らかい風が私の髪を優しくさらった。
「俺、一言も信じないなんて言ってないんスけど」
そして、そうはっきりとした声で、彼は言った。
『越前君はスポーツが好きなんだね、』
去り際に、私は彼に言った。あの少年は、そんな君に惹かれたんだよ
純粋にスポーツが好きで、自分と同じ気持ちだった君に、君なら自分の代わりをしてくれると思って。
なんて、そこまで言えるわけなくて、私は屋上を後にした。
トントンと階段を下る。
HR始まりまで後5分
越前君は間に合うかな、なんて思ったけどまぁ私たちの教室よりも近いからきっと大丈夫だろう。
・・だけどさすがにすごいな。
部活が終わった人たちがいっせいに階段を上がってきているから、人がごった返している。
うまく人の間をすり抜けて、私は二年の教室に滑り込んだ。
『おはよう。』
ニコリ、笑顔でみんなに挨拶をして、教室に入った。
テニス部のルーキー
「おっモニカ 制服届いたのか?」
『うん、なんかいつも黒い服ばっかり着てたから違和感ありまくりなんだ』
「んなことねーよ、 なんつーか、印象変わったからな、似合ってるぜ?」
『お世辞でもありがとう、「桃」君。』
「!おう!」
まだ、誰も知らない
これは、まだほんの序章だって
誰も気がつかない。
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