012
『はい、これ』
二階に一度上がった私はあるものを二つもって桃城君たちの居るリビングに戻っていた。
越前君はまだ目を覚まさないが、大分顔色がよくなったから大丈夫だと思う。
医者じゃないし、客観的にしかわからないけれど…
「これ、ミサンガか?」
一方この言葉は桃城君が私からそれを受け取って発した言葉。
私が渡したのは手作りのミサンガだけど普通のものじゃない
『うん、まっ魔よけの念をこめてみましたってね。』
ミサンガにしてはこった作りをしたそれは、はっきりいってミサンガと言うよりはどこかアクセサリーぽいかもしれない。
まぁ私が一つ一つ作ったものだし、紐の中央に数珠を通しそれを編みこんでる。
だから、まぁとり憑かれにくくなってるとは思うけれど
「お前にはいっつも助けられてばっかりじゃねーか」
『私がやりたいからやってるし、第一人には長所と短所があるでしょ?桃城君にある長所と、私にが持っている長所じゃ全然違うんだから』
ニコリ、と微笑んでから私は彼にそれを渡した。もう一つは越前君のだ。
でも、私が心配なのは彼のメンタルのほうだ。
少なからず、あの子は悪意を持っていなかったけれど、もしものことがあれば私にはどうすることもできない
私はあまり見たことはないが、従兄弟は除霊に時武器を使う。
そのためか、霊の痛み苦しみ悲しみ憎しみその他もろもろがとり憑かれてしまった人に影響し、心を壊してしまうことがある
まぁ要するに人間不信みたいな。
私は武器は使わない人間だからあまり関係のない話だけれど。
「・・・っ」
なんて思っていたら小さくうめく声が聞えた
このなかで、それは一人しかいない。
はっとしたように桃城君が越前君のほうを見、私も視線を越前君に向ける。
「ここ・・・どこっすか・・・」
彼から発せられた言葉に、ホッとした。
うん、大丈夫そうだ、なんて…どうやら私の予想というよりも心配事は華麗に回避されたらしい
まぁ、何もないのが一番なんだけ
なんて、一人で考えていたらハタっと越前君と目が会う。
『初めまして、越前君』
だから笑ってそう言って見せた。
なんたって私は今日一年ぶりに青学に戻ったんだから初めましてであっているはずだ。
・・・
・・・
・・・
なのに、痛い沈黙が流れる。シンッとしたこの空間は私にとって酷く居心地の悪いもので、思わず苦笑いしてしまったが、
「あんた、」
『え』
「で、あんたは?」
頭がグルグルする。そうしたら私の横にいた桃城君がプッと噴出して
「名前言ってねーだろ、モニカ。越前も素直じゃねーな、素直じゃねーよ」
そう言って、あぁ、っと勝手に納得してしまった。
そっか、名前か…そね、私が一方的に知っているだけだもんね…なんて、
『私は龍ヶ崎モニカ、青春学園二年、桃城君と同じクラスだよ。』
にこりと笑って、そういった。確かに、私は彼を知ってても彼は私を知らないからそりゃ戸惑うよね。なんて、考えてはいたんだけど部屋の時計をみれば驚くことにもうすでに7時30分を過ぎていた
春の半ばとは言え、まだ日が落ちるのは早い。
なるべくなら、真っ暗になる前に帰ってもらいたい。
『二人とも、とりあえずそろそろ送るよ。ももう暗いし、お家の人も心配するだろうから』
だからそう言って笑えば、はっと手の中にあるものを思い出した。忘れるところだった、なんて、ちょっと私も私でいけないけれど、
『越前君コレ、お守りね』
越前君は理解できなくて不満そうだったけれど、明日話すと約束すれば、とりあえずはと二人は帰っていった。
二人が帰った後はシンッと部屋は静まり返る。。
『はぁ・・・』
一つため息をつき、一気に疲れが襲ってきてズルズルっと椅子にもたれかかる。
【いいのか?】
チリンっ
小さく鈴の音が響けば、兄さんの声が聞こえた
うっすらと目を開けば私の背後の壁に寄り掛かって腕を組んでいる兄さんの姿があり
私は再び目をつぶった。
『うん・・・大丈夫・・私は、彼らを信じたい・・・』
あぁ、そういえば明日制服届くんだっけ
学校に届くだけいっか、明日早く行かなくちゃね・・
、