009
先生と話し、その放課後。休み時間は常に私の周りにたくさんの人が居た。
全員が全員、私だと気がつかなかったみたいだけど、話せば今の方が明るくていい、と言われちょっと嬉しかった。
なんていうか、前は弱かったからね。まだ、たくさん弱い部分はあるけれど、今はコレでいいと思ってる。
これから変わっていけばいい。それからたくさん新しい友達が出来た。それは嬉しかった。
でも気がつけば教室は夕日色に染まって私はハァっと一人でため息をつく桃城君は私が遅くなりすぎて部活に行ってしまったみたいだった。
確か、テニス部。
『(見に行ってみようかな』
なんとなく、だけれど席を立ち、鞄を持つ。かばんの中に入っているのはたくさんの課題。そして教科書類。
二年生の今は確かにはじめだけれど、私は家に帰っても勉強よりも修行のほうが多いからなるべく学校から帰るときにって思ってる。でも、あれだ、鞄重い
『はぁ・・』
ため息を付いて階段を下りる。そしてはっとした。
階段を降りる一歩前。あの日とは違う、うっすら橙に染まる世界。けれど、校舎が変わるわけはない。
『あぁ・・・ここ・・・』
それは半年前、私が変わるきっかけになった場所。2階の階段の踊り場鏡がある場所。
ここは曰くつきでもなんでもない。
まぁ、それは終わってしまったからかもしれないけれど…でも…一つ言えるとしたならば
『ごめんね・・・』
彼女は、ちゃんとした場所に還れなかったんだろう。
私が弱かったから。
【モニカ、どうした?】
ふわり、風が私を包む。すぐ後ろに現われた兄さんが後ろから私を抱きしめた。兄さんは、私がこういうことに心を痛めると、知っているようで知らないから。
だから私は顔を上げて、微笑んで『少し、昔の感情に浸ってただけ、心配しないで?』そういいきって、かばんを持ち直し歩き出した。
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バシュ
もともとうちの学校がテニスの強豪校だって先生からは聞いていたのだが、テニスコートにつけば思わず口を開けてしまった。なにより、目の前を見て納得する
普通じゃないよね・・・これ・・・
テニスなんてあまり見たことないからどれが正しいか、なんてわからないけれど昔、「彼」がテニスをし始めていたからなんとなくルールは分かる。ただし、なんとなく。だ。
これ、テニスじゃない。
桃城君は案外普通だと思う。少しジャンプ力が謎だけれど…
でも、だよ、多分部長であろう眼鏡の色素の薄い髪をした人はもろおかしいでしょう
だってボールすでに後ろに通り過ぎているのに、戻ってきてそれを打ち返しているんだよ?それに、なんで当たり前のようにラリーを続けてるんだ。
そしてつばめがえしってなに?あんなボール絶対返せないって。なんて、一人で自問自答。
しぃ・・・
あぁ、でも
耳に届いたのは、悲しげな声。ある少年にまとわりつく、それに…
『・・・』
勝手に考えてて悪いけど、あの子、危ないかもしれない、なんて…
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