008

久しぶりに校門をくぐった。
私は一応生徒だけれど、生徒手帳を提示して中に入ればやっぱり私は目立つ。
パステルカラーの制服を着た女の子達やそこの生徒にとっては、私は制服ではなく私服だし黒で統一してるから物珍しいだろう。

短くなった黒髪が風になびく…が…

『(前よりも・・・空気が悪いな・・・)』

なんて思いながら下駄箱はどこを使えばいいかわからなかったから職員玄関から校内に入り、記憶を頼りに職員室まで歩いていった。そうすれば、まあ記憶は正確だったらしくそこに職員室はあり、ノックを二回してドアを開けた。

『お久しぶりです、先生。』

そうすれば、ちょうど目の前に、その人…
まぁ、元担任が通ったわけで、にこりと笑顔を貼り付けて挨拶をすれば、彼は一瞬固まったけれど「龍ヶ崎さんかい?」と疑心暗鬼のようで聞かれてしまったから「えぇ、連絡は入っていたとは思うのですが」とつけたす。

「雰囲気が変わったから一瞬誰かわからなかったよ。正門まで迎えに行こうとは思ってたんだけど、大丈夫みたいだな 今年一年、よろしくな」

にこりと相変わらずいい笑顔。私も笑ったが、やはり雰囲気が変わった。というのは言いことなんだろう。けれど私的に気になったのは、「今年一年。」という言葉。
ならば、きっと…

『・・・と、いうことは先生のクラスですか?』

今年も彼の担当するクラスということなんだろうな、なんて、
首を傾げて思ったことを口にすれば彼は笑って「あぁ、そうだ」と言った後に「ちなみにいえば桃城もな。」と続けた。
そういう気遣いとか、嬉しいけどあんまりいらない。

『はい、お気遣い感謝します。一年間、よろしくお願いします。』

でも、一応社交辞令としてペコリと頭を下げた。
だけど…桃城君…か…

『(あれから、元気だったのかな…)』


私が来たのは部活動が開始する時間だったらしい。まだ時間がある、と言われた私はなつかしの屋上に来ていた。びゅぅっと風が私を包むが、どこか嫌な予感しかしない。フェンスに近寄ってため息をつく。下から聞こえるのは青春を謳歌している学生達。

確かに私もその一部に含まれるはずだけど、さすがに一年間、勉学から離れ、そして非日常を送っていれば彼らはひどくまぶしい。フェンスに背を預けて空を見上げ、憎いほど眩しい空。
蒼を遮断するように、スッと眼を閉じた。




***Momoshiro Side***

「転入生か・・」

いきなりだった。
モニカがこの学校から去ってからもう半年。
あれからモニカとは連絡も取れず、行方不明状態。
なのに、この時期に転入生。

「しかもいきなり屋上かよ・・・」

何を考えてるのかわかんねーな、わかんねーよ

ギィッ

扉を開けば寂れた音と音に、光が入り込んで爽やかな風も入ってくる。同時に広がったのは、空の青と、黒い、

「おま・・・」

あの日、消えた彼女がフェンスの傍に立っていた。
俺の声に反応して振り返って、その黒い瞳を大きく開いてたけれど

『久しぶり、桃城君』

あのころよりもだいぶ明るい笑顔で俺にそういった。
突然消えて突然戻ってきてあっけにはとられちまったが…

「確かに、久々だが、驚いたぜ・・・」
『ふふ、ごめんね』

ただ、元気そうで良かったと。安心したのは間違いじゃないはずだ。
すたすたと俺のそばまで寄ってきた彼女と並んで屋上を後にして階段を下りはじめる。

ふっと思って、「授業まで後20分ぐらいだな」とモニカに言えば「まだ結構時間あるんだね」と返された。
さっきも思ったが昔よりもだいぶ気持ち的に明るくなったように思う。だが…

「何も言わずに居なくなるのはいけねーな、いけねーよ」

にっとわらって告げてやればきょとりとして数秒視線を彷徨わせてからへらりと力なく笑う。

『ごめん、どうしても一人で越えなくちゃ行けなかったんだ。』
「ったく、心配したんだぜ?」
『あはは・・・』

そんな彼女の頭を撫でれば、あのころとは違って短くなった髪がぐしゃっとなった。
女子が髪型に気を使うのは重々しっているが、ちょっとしたおしおきみてーなもんだし、本人もわかってるだろう。と、思う。
…ただ。

「モニカ少しこの後いいか」

こんなこと、話せるのはこいつしかいなくて。
きっと本人は触れてほしくないってわかってるのに、

『いいけど、先生に話があるからちょっと待っててね』

なのに、こうやって、話を聞いてくれるこいつは心底、優しいやつなんだ。


ーーーーーシィ・・・ヨ

ナンデーーーーーーシィ

ホシィ・・・・・・・・


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