05
「−−−!!!なぜだ!! やめっやめろ!!!!!!!」
『!?』
ガバッと起き上がる。カタカタ震える肩をぎゅっと抱いた。怖くて声が出なくて、口をパクさせて、ポロポロ流れてく涙。でも、ゆっくりと深呼吸して、目を閉じて体を落ち着かせる。
周りを見れば夢に見ていた場所とは程遠い、静かな部屋だった。
昨日の惨状が嘘のような静かな空間。だからこそ、どくどくと酷く音を立てる心臓の音がいっそうるさく聞こえる。
『久々に…見た』
・・・
あの夢を
小さくそう呟いた。
私の奥の奥に潜む記憶の海。その中で私が犯した罪を私はひたすらに見ている。だからこそ私はこの罪を背負って生きて逝かなければいけないのだ。
「起きたかい?」
『お父さん…あっ昨日はすみませんでした!!!!』
そんな時、部屋の扉が開いてひとが入ってくる。それは間違いなく己の師であり気を失う最後に聞いた声のひとつであってあわてて謝れば笑って「大丈夫だよ」と笑ってくれた。
けれどその傍らにもうひとつの声の存在はなく首を傾げてしまう。
『…お父さん、ユウは…』
「外で素振りをしているよエミに負けたくないとかでねぇ…守られたくないともいっていたかな」
質問をすれば、すぐに彼は答えてくれた。彼の言った言葉に一拍おいて考える。
守られたくない…か…そういえば昨日無理やり飛ばしたもんね…
それは確かに男としては複雑なところかもしれない。
『ちょっと私行ってきます』
「うん、行ってあげなさい。」
ベットから降りて近くにあった教団のコートを羽織りながら告げる。そうすればぽんぽんっと頭を撫でられてお父さんは私の寝ていたベットに腰を下ろしていた。
昨日言い忘れてしまったことを私は彼に伝えなければいけない。
それが今後彼のためになるとは思わないけれど、きっとこれからこの「ティエドール部隊」で弟弟子となる彼にとって少しでも命を大切にしてもらえるように。
宿から出れば朝もやがかかる川辺の近く。
そこに昨日とは違い、少し長めの黒髪を下でくくり、ひたすら木刀を振るう彼がいた。
ただ一心に心を研ぎ澄ませるかのようなその瞳は真剣そのもので、声をかけるのを戸惑われるほどだが、『ユウ』と彼を呼べば
「!」
だからそう言って近づいていく。
私の言葉に気がつきこちらを向くと額には汗が浮かび上がっていた.
「目、覚めたんだな」
『うん. 昨日は支えてくれてありがとう』
コレが私と神田ユウの出会い
○Run Across○
(そして、すべてのはじまり)
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