03

彼が意識を浮上させたとき、すでに体の痛みはなかった。

そのかわり見慣れない天井が視界にはいり、ぼんやりとする意識を覚醒させながら窓から差し込む月明かりを頼り周囲を見渡せば隣のベットが目に入る。
己に背を向け無防備に寝ているらしい。



『う…』


声からして女だと理解して、彼は体を起こした。
いわずもがな、眠っている女とはエミなのだがたった今意識を取り戻した彼は知るよしもない。

ベットから足を下ろし立ち上がって回りを見渡せば少し離れたテーブルに己が持っていたであろうソレを見つけてため息をついた。


あの惨状が嘘や夢でなかったことの証なのだ。

ふるふると首を横にふってかんがえをかきけして、そうしてからゆっくりともう片方のベットに近づいていく。
己の影が少女にかかる

黒髪の女。
眸は瞼に遮られまだ何色かはわからない。
、が、小さく呻き声をあげて身をよじったと思えばゆっくりと瞳を開かれる。
驚いて身動きがとれない間にゆるりと視線が少年をとらえると意識が覚醒したのかばっと少女は体をおこした。


『起きたんだね!良かった!!』


そうして満面の笑みでエミは彼に言ったのだ。驚きに目を見開いた少年に「どこも痛くない?」とエミはぺたぺたと体をさわりだす。

「おっおい!!!」
『うわっごめんね!!』

いきなりのことに固まっていたらしい彼だったのだが、意識を取り戻して声をあげ距離を取ったのは仕方ないのか。
確認していた手が宙をさまよってそうしてエミは苦笑いをこぼしたのだが「女!お前が俺をここに運んだのか!!」と威嚇するように声をあらげられても彼女はそのままで

『あはは、女って名前じゃないよ。私はエミ。ほら!次は君の番!』

しまいには己の名を告げたものだから彼は目を点にして驚いていた。
鳩が豆鉄砲をくらった顔と言えばいいのか。それでもすこし視線をさ迷わせてからポツリと言葉をこぼす

『?もう一回』
「ユウ…だ…」

けれどあまりにも小さい言葉だった。首をかしげたエミに一度唇を噛んでそうして告げられた「名」。
女とも男とれる名前ゆえに言い渋ったのかそれとも否か。

口を開こうとしたエミだったが、響き渡ったのは耳をつんざくような激しい爆発音だった。
完全に遮られた会話。

ハッと目を見開いたエミはベットから飛び降りてユウを押し倒し身を隠す。その際文句を言われたがまったく聞くきはないようだ。
身を低くしたままそろりと外が確認できる窓に視線をむければ見えたのは…窓からこちらを覗く不気味なもの.

にたりと口角が上がって不気味に歪められた目元に彼女の表情が歪んでぽつりと『…油断しすぎちゃった…』とその言葉をもらしたのだ。


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