03




 私が目が覚めたときもすごく寒くて…酷く寒い雪の日だった。
でも、室長達がすぐに洋服を持ってきてくれて優しくしてくれた.

暖かくて…私は生まれてきてよかったんだって、心からそう思った。でも…



 ・・・・
『ユウにも過去の記憶があるでしょう?私にもあるの』



毎日毎日…悪夢を見るようになった

目の前に居る…やさしい男の人を…私が殺してしまう夢。
私が持っているイノセンスの鉄扇と一緒。それを振って…風を引き起こして…
首をはねるの。驚いたような顔をしていた彼だったけれど、瞬間…鮮血が飛び散って…大きな爆発が起こって…「私」は泣いた。




『こんな記憶を見せられて…だんだん私の心は死んでいった。あぁ…私は、愛する人を殺してしまった…。なんて…あの当時小さくてもすぐに理解したわ。だから…人を愛したくない…殺してしまうくらいならって。なんて思ってたときに…。君が起きたんだよユウ。…アルマがとっても喜んでた……でも、私はそのときイノセンスに適合した。

 3年間…がんばってがんばって…やっと…それで私はティエドール元帥の弟子になった…。3年間の実験の中で…私の命はかなり削られてたけどね』


今はもう過去の話。
それは彼女にとって「現在」を見るに当たり、昇華したものだった。だからこそ、こうして話しているのだが、半分は目の前の彼が「同じ」存在だということもあるのかもしれない。


『正直ね。雪の中に埋まってるユウを見たときは本当に驚いた。実験が、まだ続いてたんだって言うのと…ふふ…笑って、ユウを見たときに、不思議なことを感じたの。そんなことありえないって思ったのに予感はあたった…私は…ユウが好きになってた』



そう言葉を紡いでくエミ.
その瞳は、慈しみであふれ白い肌の、目元がほんのりと赤く染まる。
小さく笑って、くるりと彼に背を向けた。


『でも、私にはそれを伝える「術」がなかった。なにより、私の中の記憶の人をあの時昇華することができなかった。だから…任務に逃げたの。私はユウのそばにいることはできないって、ユウの中にいる人からあなたを取れないって。』


そのまま、一歩。また一歩。
彼女の背が闇に紛れて消えようとする。白いワンピース、白い髪。
雪にさえ隠れられるだろうが、染まり切っていないその場所に、彼女の姿は浮き上がって逃げられはしないというのに。


『返事を頂戴なんて、私にいえることじゃ「俺も好きだ」』


ぴたりと、足が止まった。
そのまま静かに振り返った彼女の瞳に涙が浮かんで、静かに滑りおちていく。


「…俺もお前が好きだ」


彼の中でずっと引っかかったままだった返せなかった言葉。
静かに歩み寄り、その腕の中にあのころよりも少し距離の開いた世界の高さに。

腕の中に彼女を納め、もう一度同じ言葉を告げる。


「お前は俺を守ってくれた。今度は俺が守る番だ」


そう言って抱きしめれば少し苦しそうな声
だが俺は気にしてられなかった


『だめ、だよ。ユウ。』


本当に苦しそうに言った
それは何に対しての否定なのか。
だが、それを告げさせるわけがない。今までの話でおおよそ理解はしている。だから言葉はいらない。行動に起こすだけだと、唇を合わせた。

思いが伝わればいい。
俺の残量が少しでも移れば、そうでなくても、気持ちが。

確かに言われた通り、俺の中ではまだ「あの人」を探してる。
でも、あれは、明らかな「過去」だ。
あれから何年たったのか。 自分でもエクソシストのことは調べている。
調べているが彼女の経歴は見つからないし自分のものもとんと見つからない。

ならばそれは「今」を生きるための糧にするだけだと。

そしてその中に、この女にいてほしいと。


「なぁ。」


一度離してほほを撫でる。
が、また逃げ出そうとしたから、舌打ち一つ。
再び唇をふさいで、舌をねじ込んだ。

呼吸を奪って、酸素を奪って。苦しさにうめいて俺の肩を押すその手に自分の指を絡めた。
力が抜けて落ちた体を引き寄せて、抱きしめる。


「…頼む…消えないでくれ。」


吐き出した言葉は届いただろうか。
驚いたように広がる空色の目が俺をとらえたが、一瞬複雑そうにして、そのまま指がほどければ俺のほほに手が添えられる。


『…私、ユウよりも先に死ぬんだよ?』
「わからねぇよ。」
『もしかしたらユウのこと守りきれないし。』
「俺が守る番だ。……もうエミには守られすぎた」


そんなもしもの過程なぞ俺には今はいらない。
ただ、今を願うならば…


『ねぇユウ。あのね。』



Holy Night 
(セイナルヨル)





あのね、私たちがあったのも、クリスマスの日だったんだよ。
ユウが約束としてそういうなら、来年も、また一緒にこうしていてくれる?




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