03
***Side Lavi
俺が黒の教団に入ったのは、少し前。
そこで出会ったリナリーという女の子が教えてくれた「エミ」という女性のことは書類の上でだけ、知っていた。
初めて成功した「 」であり、悲劇の始まりを生み出した少女。
俺よりの数個上だと聞いていた。
その彼女がいるという場所は、今やAKUMAとの最前線。
そこに今回「記録」として派遣された。
…もちろん、今の目の前の状況は、教団には伝えた。通信機の奥から何か割れる音が聞こえた後、コムイのリナリーを呼ぶ声が聞こえたから…きっと俺はタイミングを間違えたんだろう。
目の前には、AKUMAの瘴気が立ち込めてる。それは、長い間ここで戦いが行われている証拠だ。
「ぅお!?」
いきなり突風。
さすがに突然のことで反応が遅れた。目の前まで迫ってた瘴気の壁。やべぇって思う前に、名が呼ばれてマフラーが後ろに引っ張られる。
「ラビ!離れろ!!」
「クッ」
ちょっとだけジジイのレアな焦った声が聞こえたけど、正直それどころじゃない。首が締まってる。
『風奏第2番 小円風霧!』
凛とした…けれど少しか弱い女性の声。
同時に、ブワリと瘴気の壁は昇華というのか、空中へ霧散して消えていく。
思いっきり引っ張られた反動でせき込んでしまったが、ふわりと、舞い降りてきたのは白髪の。
『…えくそしすと…?』
黒いのは、間違いなく団服「だった」ものだろう。ぼろぼろになってむき出しになった肌は、血のようなもので汚れている。が。それを隠す気もないらしい。いや、隠せる余裕もないのか…
まるで氷のような青い瞳と、雪のように白い髪。
そして、大理石のように白い肌にはいくつもの亀裂。
俺と、ジジイを見て、あきれたように一つ笑みをこぼすと、そのまま体が傾いた。
あわてて支えるが、彼女からは確かに心臓の鼓動が聞こえる。それも、随分小さな音だ。
「ラビ、」
「わーってるさ!っジジイあと頼んだ!!」
その彼女の体をしっかりと抱きかかえて、一緒に来ていた探索班のメンツに布をもらって彼女の体を包み込んだ。
あまりにも、軽すぎるその体は死んだ人間を抱えているようだと、
***Side BookMan
荒れ果てた大地に転がるいくつものAKUMAの残骸。
この中であの娘っこ一人で戦っていたのかと思うと、随分と無茶な任務につかせていたんだろう。
頭の中に擦りこませたその情報を浮かび上がらせて、また眉を寄せる。
「皮肉な運命(サダメ)じゃのう…」
エクソシスト・天樹エミ.
ティエドール部隊 副元帥
イノセンス 装備型 形状 鉄扇
「竜宮舞姫」
アジア支部出身の現在19才.
そして
「造られた者」
それは、いくつもの禁忌の末に生み出された。
パンドラの一つ。