02

『ユウ、どこにいるの?』

教団
私は人を探していた。

喧嘩してから一度も口をきいていない人を…




ことの発端は、数日前までさかのぼる。
いつも通り己の日課を終えて、そうして教団の中を歩いていればあわてる声が聞こえて、その中に彼の名があったのだ。
あぁ、またわがままを言っているのかとあきれ半分、心配半分でその場所に向かったのだ。

『ユウ!?』

しいて言うならば、絶句だった。
任務から帰ってきた彼がボロボロだったからだ。
酷くあわてたのは彼がセカンドだから、

そんなのは、いつしか建前で、本当は彼が大切だと気がついたのはいつだったのか。

『どうしてこんなになるまで攻撃を受けたのっ!』

声を張れば、視線だけ寄越される。そのままにらめば目を閉じて彼は私を視界から消した。
けれど、何もわかっていないのだ。自分の能力をただ便利だと思ってるだけで、その対価を軽く見ているんだ。

「うるせぇ、俺は任務をまっとうしただけだ」

その言葉に胸の奥が熱くなる、目の奥が熱くなってくる。
心臓が軋むようにいたい。

『でも…死んじゃったらっ』
「だまれ!」
『っ!』

いつもより機嫌が悪いのは任務中なにかあったからだろう。けれどいつものことだと思ってしまう私もたいがいだった。
ただ、怒鳴られた。それは、初めてだ。

ひゅっと喉が嫌な音を立てるのを聞いて、息がつまる

「そんなに死ぬのが怖いならエクソシストなんてやめちまえ」


ドクン


心臓がその言葉に腹を立てたかのように激しく脈打った。
でもそれ以上に…

『…らい…』
「あ?」

視界がぼやけて、晴れて、ぼやけて、晴れる。あぁ泣いているんだって、客観的に思ってしまった。涙なんて流す機能があるんだって、思ってしまった。
あぁ、あぁ、なんて残酷なんだろう。

『ユウなんてもう知らない!!だいっきらい!!』

パシンっ
乾いた音が響いた。ほとんど、衝動的に動いたことで私の行動に目を見開いたまま固まったユウ。
それを見ていられなくて、私は走って自分の部屋に逃げた




その日から、ユウを私は避け続けた。
基本的にユウとずっと行動していたから彼がどのくらいの時間にどこにいるか、なんて重々覚えている。
だから、故意的に彼が行かないようなところに行けば、会わないことなんて簡単なことだ。
それこそ、私が誰かと一緒にいるとき、とくにリナちゃんと一緒にいるときは絶対に彼は寄ってこないから。



でも、こうして今は私がユウを探してる。
どうして、喧嘩した人を探してるかと言うと、私に長期の任務が入ったからだ。

今日のお昼に出発で…おそらく。

『(私の)』

最後の仕事




何度も何度も訴えて無理やり通した願いだった。
だからこそ、きっと私は「今度こそ」操り人形のように捨てられるんだろう。
そのための罪だから。

『喧嘩したままお別れは嫌…』

ぽつりと、つぶやいて、身をひるがえした。
向かう先は一つ。




『ユウ?いる?』

教団の裏手にある深い森。よく二人で鍛錬をした場所だ
けれども、30分以上たっても見つからないからきっとすれ違ったんだろう。

なんて寂しくなった。
こういう時にばかり、私たちはすれ違ってしまう。

『…大嫌いなんて言ってごめんね』

でも、声が届くことを祈って私は言った。
どうか、どうか届くようにと、祈りをかけて、ささやくように。

一度息を吐いて、目を閉じる。
言いたいことはたくさんあるけえれどわがままはいえないから。
だから本当に言いたいことを。

『ユウにはちゃんと生きて欲しい…「ヒト」は限られた時間の中でしか生きられないものなんだよ。だから…私はユウ…君を失いたくない…』

頬を伝っていく感触に、苦笑いが出てしまう。
あぁ、こんな時に限ってこういう感情が出てきてしまうんだろう。なんて浅はかなものなんだろうか。

『ユウ…好きよ…誰よりも誰よりも愛してた…』


夢の中のあのヒトはずっとずっと過去。
今を見始めた私のそばにいるのは誰よりも君だから。






『さよなら、ユウ』


どうか君に幸あれ。

***




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