05

一言でいうならば「不気味」といえる。
そんな薄暗い道を虎徹と鬼切に連れられて歩いていく。ここでホラー映画撮れるんじゃないかってぐらいだ

そんな道を歩いていけば、赤い光が点々とした軒先。現代で言う商店街のようなそんな景色。歴史の授業で習った街並みのような感じにもとれる。

美しくも妖しい世界。それが彼らの言う「あちらがわの世界」なのだろう。確かにヒトがいていい場所ではない気はする。

にゃんこ先生は喜んで来そうだ。
巴衛殿ーーー!なんて大はしゃぎしながらとある屋敷に入っていった。二人はきっと巴衛さんが好きなんだろうなぁって改めて、やっぱり私とにゃんこ先生のようなんだろうなぁ…

とか、思ってたのだがゆっくりと入っていけば中からぎゃーぎゃー声すら聞こえる。
あぁ、暴れてるんだなぁとか思いながら中に入っていけば…その光景にきょとんとする。

これは俗にいう遊郭っていうのか…
きらびやかな装飾に身を包んだ女の人たちが居る。

鬼切たちの声が聞こえる。切実な声。

巴衛さんがいるであろうその部屋に私は入る気もなく、背を預けため息をつく。


「別につぶれてもいい。俺の知ったことか。神使などあんな仕事やめて清々したよ」


けれど、彼の言葉に、深く心が刺さった。思わず目を見開いてしまう。あんなにも大切な居場所。きれいに整えられた庭。あのすべてをいやいややれるものなのだろうか…なんて、

ヒトの私はわからないけれど…そう思うんだ。彼は、天邪鬼だと…人間的感覚ではそう感じてしまう。

あぁ、でも、

打ちかけなんて纏っていない。きれいな化粧もしていない。


『巴衛殿。』


発した声は思ったよりもしっかりと出ていた。
スッと、開いている扉の前に座り正座をしてから、一度田沼の親戚の家に泊まらせてもらった時のおかみさんの真似をして、床に手をつく。きれいにそろえて、頭は少し、下げるぐらい。
そういうことを習ってる、彼の横の女性たちには負けるだろうが、私の「言葉」はまけるつもりはない。


《リナ様…》
『今の言葉だけは、取り消しなさい。』


鬼切が私を呼ぶが、今は答えれない。頭を上げ、彼を見つめれば私を驚いた目で見ていた。横にいる彼女たちも私を驚きの目で見ている。
部屋の中を橙の光がつつみこんでいる


『ミカゲさんを何十年も待っていた。彼を待つためにあの場所を守っていた。そんなお前の行動を、自分自身を裏切ることは言っちゃいけない。一宿一飯の礼は返したからな。私は私のあるべき場所に帰る。なんの世話にもならなかったが、感謝するよ。ありがとう。』


最後に「もう二度と会うことはない。さよなら」と付け加えてから立ち上がり、あるきだす。彼は、暖かさを知っていて、家族といえる鬼切たちを信頼してあぁいうことが言える。

私は、言えなかった。トウコさんたちに。それが、今は少し悔しいが。大学が夏休みになったらまた向こうに一時的に帰るから、その時に甘えたい。

もうたくさん甘えさせてもらっているけれど…田沼たちと遊んで、チビ狐にも会いに行ってやろう。露神様の祠にも行ってお参りして、たまには名取さんを驚かせたい。

いろいろ考えることはあるのだがとりあえずここからでなくちゃな、なんて。一区切りをつけて

あぁ、でも


『私になんの用だ。』


目の前に、3つ。
一つ目と、タヌキみたいなのと、宇宙人みたいな妖怪。足を止めれば、彼らは舌をだしよだれをたらし、私を見ている。


「ミカゲ神社の新しい土地神という人間かい」
「ミカゲが土地神やめたとは聞いていたけど」
「後釜がこんなうまそうな嬢ちゃんとはねぇ…」


あぁ、あっちでもこっちでも。やっかい事は続くんだと思う。今は運の悪いことににゃんこ先生はいないし、鬼切たちはおいてきてしまった。あの男はなお使い物にならない。そして、私もあまりよくない。

名取さんにはいろいろ感謝をしなくちゃいけないと感じながら、ポケットの中に手を伸ばして彼から教えてもらった「それ」を確認する。


『うまいかうまくないか知る前に、お前たちは私にはふれられない、がな!』


ポケットから引き出していく。名取さんが教えてくれた紙人形の動き封じ。

ぐるり、グルグルと妖怪たちを囲んでいくそれは、妖力に応じて硬さもきつさも変わってくる。


『縛』


パンっと手を叩けば、緩むそれは妖怪たちを縛り上げる。苦し気な声はあまり好きじゃないけれど、悪さをするなら仕方ない。

拝み屋でも祓い屋でもない、なる気もかけらもないが、自分を守るために力は最低限持っておきたかった。レイコさんはきっと、自分を守るために強くなっていったから


『しばらくすればほどける。動けば動くほど苦しくなるからな。』


あまり、力でしばりつけるのは好きではないが。時と場合による。食われるか食われないかの前にこれは正当防衛だといえる。土地神とか、そういうめんどくさいものには余計なりたくはない。

すたすたと歩いていく。
道はちゃんと覚えているからなんの問題もない
早く帰って先生に謝らないと。な…なんて考えている私は早速現実逃避をしているんだろうな。


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