04

体は思ったよりも疲れてしまっていたらしい、が体はいつもの流れのように目が覚める。
いつもとは違う部屋の空気に、恐怖心を抱いているのかもしれないが、神社の中。
襲われることはないにしろ、やっぱり身を守るものがないから多少は怖い。


『(ちゃっかり布団までいただいてしまったしな…それにしても…)』


外からみただけではオンボロのように見えたが、きれいなものだ。ヒトの手は入っていないように見えたのに…それはあの男の人の力なのかもしれないが…

信仰のなくなった神の行く末を知ってしまっている私は…すこし怖いのかもしれない。


《起きられておられましたか?》


ふわり、火の玉。斜め上を見上げればポンっという音と共にふわり降りてくる二つ。


『あぁ、ありがとう。助かった。』


彼らに笑いかけて、しっかりと体を起こす。結っていない髪が肩を伝い滑っていくが、なんの問題もない。腕を確認し、ちゃんと飾りが付いていることにホッとしつつ髪を結わえる


『二人とも、着替えてからになってしまうが泊めてもらった礼がしたい。』


何かすることはあるか?と聞けば、二人とも目を輝かせた。






庭や社の掃除、障子の張替。それこそ、雑用というべきものなのだろうかそれを、淡々とこなす。

一宿一飯の礼はさすがに返さないとまずいし、にゃんこ先生もおなかが減ったらどこかにふらっと出かけていくだろう。名取さんから教えてもらった式神を使ってもいいと思うが、少なくとも神様の社で使いたくはない。…大変だけど。


《リナ様!》
《次はこれにございます!》


そして突拍子もない二人はまた突然現れる。
そういえば、いつの間にか名を知られていたが…大丈夫だろうか…不安だ。


『なぁ、お前たちはなんていうんだ。』


だから、というわけではないけれど口から出たのはそんな言葉で、宙を浮く二人はきょとんと私をみるとふわふわーっと床の上に正座し


《《我等!鬼切!虎徹!この社の精にございます!!》》


さも当たり前かにそういうものだから、少しくらりとした。もしかしたら、名を使役されることに恐怖やそういうものがないのかもしれない。それか本当に知らないんだろう。苦笑いをしてしまうが、


『鬼切、虎徹。私は昼には帰るよ。泊めてくれて本当にありがとう』


おそらく、仕事も大体終わっただろう。
ニコリ、ニコリ。あのころよりもだいぶ自然に出るようになっ笑顔に、逆に精と名乗った二人は固まる。


《と、ととととと、巴衛殿がいない今!!ミカゲ神社を誰がまもるのですか!!》
『その巴衛ってずっと気になっていたんだけど、何者なの?』
《巴衛殿はもともと野狐でございましたが、ミカゲ様が犬がお嫌いなため狛犬の代わりに迎えられたのです》


あぁ、確かに犬に絡まれてたなあ。なんて思ってしまう。狐。狐か…
野狐といえば、チビ狐も野狐だったはずだ。彼は今げんきだろうか…なんて遠い目をしてしまうのはきっと仕方のないことなんだろう。


『そうなんだ、』
《はいっ!今リナ様にやっていただいた仕事はすべて神使である巴衛殿がやっていらっしゃったことなのですよ!》
『うん。』
《20年間、土地神様がいつ帰られてもいいように!》
『でも、私は土地神にはならないからね。』
《《リナ様ぁ〜〜》》


まるで彼らは中級の二人のようだ。
思い出すのが向こうのことばかりで少しさみしくなってしまう。でも、だ。
彼にも一言お礼を言いたいと思うから


『ねぇ、その巴衛殿はどこにいるのかな。』


彼らに、一つの頼み事だ。
そうすれば彼らは顔を見合わせてから、《おそらく巴衛殿はあちらの世界だと…》と言葉を濁した。


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