生まれたばかりの命が全く同じ顔をした男に殺される。
初めて会った時、無垢に笑っていた幼子は予言にしばられて壊れてしまったんだろう。
「ディアナ」
静かに彼女を呼んで振り返った。
その姿は血の色で赤く染まり、彼の第一印象である美しい新緑の色も今は見る影もない。
暗くよどんだその瞳も、同じだ。
『満足、しました?』
それ以上、赤く染まった彼に、ディアナは何もいえなかった
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導師イオン
彼がダアトに連れてこられたのはそれこそ予言によってだった。
幼い頃にダアトに連れてこられ、教養を叩き込まれたらしい。
ディアナが直接、そんな彼にかかわったことはなかったのだが、それこそ、彼の秘予言と呼ばれる秘密によってヴァンとモースによって彼に初めて会うことになった。
彼はアッシュ以上に表と裏がはっきりしている。
ただの「良い子」ではなかった。
それでも、言われるがままになってしまったのは、今ならば彼の夢が叶えられるのではないかという淡い期待を持ってしまったからだ。
「・・・こんなの駄目だね。」
けれど、そんなの結局はただの期待だとわかっていた。
ザレッホ火山。
何度目かの実験によって生み出されたレプリカたちが、ボロボロの布の服を着て震えている。
その様子を見て、イオンが言い放ったのはその言葉だ。
この暑さの中で弱ってしまっているレプリカたちに、ディアナは目を細めた。
最近、よく連れて行かれるバチカルにいるレプリカルークと全く同じものだというのに、やはり、被験者であるイオンが弱っているということもあるのだろうか・・・。
「では、これは破棄いたします」
「・・・ふん。」
たった一言だ。
そうヴァンは言い放った。
もう興味がないというように身をひるがえしたイオンを見送ってもう一度レプリカたちを見る。
うつろで、弱っている彼等。
きっと放置していても勝手に息絶え死んでしまうだろう。
特に、ステータス的にも現在の様子的にも2番目と4番目はそう長くはない。
「ディアナ、手伝え。」
檻を開けて、ヴァンが言った。
まるで荷物のように軽々と弱っている2番目と4番目を担ぎ上げる。
この場所だ。
何をするかなんてわかってしまっていた。想像が付いてしまった自分が腹ただしかった。
あっさりと投げ捨てられる。マグマの海に消えて行く緑、その様子に、抱き合っている二人が悲鳴を上げた。
当たり前だ、たとえ生まれたばかりといえど、恐怖は誰にでも最初からあるものだ。
『あの。』
だから、というわけではない。
一言、彼女がヴァンに声をかければ彼は振り返り「なんだ」と睨みつける。
『・・・捨てるならば、私にくれませんか?』
ーー
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