06

**Luke Side


--ルーク、貴方は誰よりも唯一で、誰よりも自分を愛してあげるんです。


そういって優しく頭を撫でてくれた先生を思い出す。
頭が痛くてどうしようもなくて吐いた。

いつのまにか、先生はあの船の中からいなくなってた。
そのあとのジェイドは俺に変に気を向けているような気がしたけど、そんなことも含めてやっとバチカルに帰ってこれて、そうして、次に言われたのは親善大使のこと。

それから、ヴァン師匠から言われた、俺が国を救う英雄になれる。ということ。
…でも、俺、別に英雄にならなくてもいいと思った。

だって、英雄なんて得体のしれないものになって何になるっていうんだよ。
俺はまだなにもしらない。自分のことも、自分の家族のことも、自分の国のことも。
なのに、世界の英雄。だなんて、規模が大きすぎてぴんとこなかった。

第一に、俺にとっての英雄は先生で。
先生がたくさんの外のことを教えてくれたから俺は恥をかかなくてすんだ。
でも師匠はそれを教えてくれなかった。

もしも、俺の今後を考えてくれるなら、外の世界のことをおしえてくれればいいのにって。そう考えると、やっぱり師匠がすこし、変だと思って。

だから、また始まったアクゼリュスまでの旅のなかで、ティアに師匠が本当はどんな人なのか聞いてみようって、それから、ジェイドに英雄ってどんなものなのか聞こうって、なんでかついてきちまったけど、ナタリアも含めてみんなに相談しようって。

そう、考えた矢先に、マルクトの軍艦だったタルタロスが俺たちの前に現れてイオンをさらっていった。
そしてそこで俺と戦ったのは、俺と同じ赤い髪の、緑色の目の、同じ年ぐらいの、まるで鏡あわせの。そんな。男で。


「ルーク、大丈夫?」
「わけ、わかんねぇよ…」


考えることが、山ほどある。
しらないことが多すぎる。どうしたらいいかがわからない。精神的にきつくて、廃工場をでて少しして早めの夜営を組むことになったけど、正直ありがたかった。

さっきから思い出す度にえづいて足を止める俺に対して、嫌な顔をするやつは、いなかった。ただ、ナタリアだけは、しゃんとしろと、俺の背を叩いたけど、それを止めてくれたのはジェイドで、間に入ってくれたのはティアで。
二人は、多分、先生から俺のことを言われてるんだと思う。だから、余計いろいろ助けてくれるんだ。
多分それをナタリアにいったら、ナタリアは先生が嫌いだから、余計声をあげるんだろう。また、昔みたいにいろんなことをってそう思ったら、またあたまが痛くなる。


「…なぁ、ティア。 先生って本当はどんなこと考えてる人なんだよ。ほら、お前、先生殺しにうちに乗り込んできただろ。それは、なんで。」


でも、それで立ち止まったら多分、俺はいけないんだ。
先生は、俺が好きなことを学べといった。好きなことだけじゃなく、嫌いなことはもしかしたら好きなことに繋がるかもしれないから、いろんなことに手を伸ばして見なさいと。

だから、師匠のことを疑うのは、多分、酷いことだけど、でも、知らなくちゃいけないと思うんだ。


執筆日20221124



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