*Side Jede
コーラル城でガイがシンクという六神将から奪い取ったデータをケセドニアのアスターのもとで解析し、まぁ、一部データの欠損はありましたが、おそらく問題はないだろう。
これはずっと彼女が私と共に研究していた内容だったのだから。
けれど、それ以上のこともあった。
同位体の研究。
そこに書かれている数字の羅列はローレライ…第七音素のことだ。
皆が話している間、走り読みではあるがデータを読み漁るが、これは、くわしく知りたい。
’聖なる炎の光は愛しき子。偽物ではなく、一つの本物。不安定、故に、孤独を嫌う。誘い、導き、護り、学ばせ、彼との信頼を求。栄光を掴む者に注意せよ。
翡翠へ、偉大なる師の元、共に学んだ雪より。’
翡翠。それは私の名に良く似た石の名前だ。
雪というのは…おそらく…
「(サラ…)」
これをあなたが私に託したということは、貴方は少なからずこの件にかかわっている一人と言うことなのでしょう。
ですが、なぜ、そこから動かないのです。
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砂っぽい。
それが第一感想だと言ったら怒られそうだが、機械的にここはあまりよろしくはないだろう。
流通拠点・ケセドニア。二つの国の境界をまたぐ場所。
シンクがコーラル城から少々不安そうにしていたのは気になっていたが、すぐにそれがルークが同じような存在だからというのは理解できた。だから、彼を安心させることが私の役目である。
一人の子供を安心させることもできなければ先生といわれる筋合いはない。
「ねぇ、サラ。あのガイってやつにちょっと仕掛けてもいいかい?」
『…かまいませんが無茶はしてはいけませんよ?』
「わかってる。」
きっとあぁはいったが彼は彼でデータをとられたことを気にしているんだろう。
彼がむちゃをしなければ、男の子なのだから少しやんちゃをしてもいいとは思っている…のだが…
『シンク、カースロットを使いました?』
「…」
『シーンク?』
「…使った。」
すでにキムラスカ行きの船が出港し、その後ろ姿をシンクが見ていた。
『まったく…あれは貴方がそばにいることが大前提の技じゃないですか。発動条件が無茶じゃないですか』
「それでも、追いかけるのにはちょうどいいだろう?」
『そうかもしれませんが…まぁ、まさかアスターのところで解析されるとは思いませんでしたし…まじめに追いかけてきますね。』
懐から一つのリモコンを出す。
正直、データはかまわないのだが、総長の手に渡ることだけは許されない。ならば、さっさと処分してしまうに限る。
戦いの中で紛失してしまうのがきっと手っ取り早い。
…あそこに、彼がいることは間違いない事実だが…。
譜業のブーツに触れて、飛行譜石の力を強める。
ふわりといまだになれない浮遊感に、少々表情を歪めてしまうのは仕方がないだろう。
「…母上。」
『落ち合う場所はわかりますね?』
「うん。またあとで。」
『えぇ、またあとで、』
海と空とでは速度が違う、あっさりと船に追い付いて物陰に身を隠した。
そのままそっと、小型の譜業ロボを放って周囲の観察に行かせる。さて、これで問題はない。
『(…ジェイド。)』
データをまとめたのは私だけだ。
きっとジェイドはその言葉の心理を読み解いてくれると信じます。
だから、どうか彼を独りにしないでください。
なんて、考えていたが、船の前方より別の船が迫ってくる。
どういうことだ、と舌打ちしてしまった。
20190608
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