02

服を用意し、食べるものを用意した。
最初から固形物はあまりよくないだろうから暖かいスープとおかゆ。

自室のさらに奥。
アッシュにさえ秘密にしていた隠し部屋に二人を連れて行って隠すことにしたのは正直、ほんの気まぐれだった。

さめないうちにと、彼等の前にそれらを差し出せばおそるおそる手をつけたあと、目を輝かせ食べ始めたのを見て、自然と頬が緩む。
あの情景を見たが、それこそ彼等は何もしらない、ただの子供なのだ。


『・・・どうしましょうかね。』


彼等を「イオン」と呼ぶわけには行かない。
きっとおなかが減っていたのだろう未だに手を止めない彼等を見てため息を付く。

せめて、導師の顔を知らないどこか遠い場所で、普通に安心して暮らせるようにしなければいけない。
彼等は生まれは特殊だろうと、生まれたからには感情があるからにはただのヒトなのだ。


『(私が、必ず守らなければ・・・)』


なら、強くならなければ・・・









その数日後、
少し出かけていた時に、彼のレプリカは一人になってしまっていた。






*Side He

『やはり、私ごときに守れるものなんてないのですね・・・』


寂しげな、声が聞こえる。
優しく優しく僕をなでる手とは裏腹に、かなしそうな声。



『結局、私は壊すだけしか能がない・・・』


するりとその手が離れてしまって、暖かさがほしくて目を開けた。
そうすれば、驚いたように目を見開いたそのひとと目があった。

赤くて、あつくて、せまくて、くるしかったあの場所から助け出してくれた人。
あたたかいものをくれてそれでおなかがぎゅぅってなってどうしようもなかったのをたすけてくれたひと。

そういえば、ぼくは、まだ。


『ごめんなさい、起こしてしまいましたか?』


身体を起こして、その言葉にあたまをふる。


「ねぇ、あんたは、なんていうの?」


出した言葉は酷くぶっきらぼうだった。
それでも、めのまえのひとにつうじれば良いと思った。


『・・・私はディアナです。』
「・・・ディアナは僕のこと、しってるの?」


目が覚めた時に、すでにあの場所に居た。
なにもわからずだれもわからず、ただまわりに同じ顔の同じくらいのひとがたくさん居た。
でも、どんどん、まわりからきえていった。


『・・・そうですね。知っています。たくさん。たくさん。それでも、貴方にとっては辛いことです。』
「辛いってなに?」
『心が、体の内側がぎゅぅっていたくなることです。ずっと付きまとってきます。』
「ふぅん。」


正直、どういう意味か全然わからない。
それでも、このヒトが悲しそうな顔をしているからきっと痛いことなんだろうってことはわかった。


「ねぇ、僕はなんていうの?」


唐突な疑問を口にすれば何回か瞬きをして、口を閉じてしまった。
だけど、また僕の髪を撫でてくれるから、その暖かさが嬉しくて、彼女の膝のそばによる。


『シンク。』
「しんく?」
『はい、シンク。貴方の髪の色は緑ですが、その反対の色は赤なのです。だから、貴方は誰にも染められない。自分だけの色を創る。ということで、シンク。嫌ですか?』
「いいや、嫌じゃないよ。しんく、シンク・・・うん。大丈夫。」


目を閉じて、開けば安心したような彼女が見えた。

ずっとかんがえてはいたのだ。車椅子での移動は酷くめんどくさいし、ヒトの目を引く。
ならば何かを足の代わりにすれば良いんじゃないか。・・・とそうは思っていたのだが、何の役に立つのかと考えて止めていた。
設計図の積み上げられた中から目的のものを見つけ出して作り出したのは少しだけ前の話だ。






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(お題#指切り様)
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