私の始まり



クロスが私を引き取るって話しをきいたその日に私はクロスに受けわたされた。
施設としては 私みたいな異端児なんていてくれない方が助かるだろうし、何より私もあそこにいる時間は短いから物もそんなに持っていなかったから、早くすんだのだろうけれど
持って行くものとしたらたった少しだけ



「さっきも言ったが、お前にはエクソシストになってもらう」



ひとけのない場所まで来てからクロスは脚を止めて私にそう言った。
森の中、ざわめきの様に風にゆれて木々は月明かりをゆらしていく。
私達の間にとくに会話は無い。



『貴方は私に何をさせたいの』



すこしの間、
私の口から出た言葉は六歳の口から出るには、大分を落ち着いたものだろう。
彼は面白いというように口角を上げる。

いつにもまして彼の片目を覆う仮面が不気味だった。



「詳しく話せば長くなる。いいか」

『上等よ』



イノセンス
それは約7000年前のノアの大洪水で世界中にぶちまけられた神の武器。
イノセンスに適合した者のことをエクソシストと呼ぶ。

エクソシストが生まれたのは 100年前
キューブと呼ばれるイノセンスが発見されたから

そしてエクソシストをまとめる組織を黒の教団と呼ぶ

ノアの大洪水を逃れたノアの一族はAKUMAという生物兵器をつくり、人類滅亡を図っている
それを止めるためにエクソシストは戦いを続けている


クロスが言った 内容は だいたいこういうことだと思う。


森の一角の切り株に二人ですわって、二人だけの世界、そして話、



『旧約聖書ノアの洪水にノアの一族ね』



随分とっぴょうしもない話だろう
あの平和な世界で生きていた 私にはそうとしか思えなかった

けれどこれがこの世界の普通なのだ

ひとつ息を吐く。

立ち上がれば「怖いか」と訪ねられた。

クロスとしてはやはりこの年齢の子供がというのはあるのだろう。

あいにく私は一度死んだのだ。
そして今を生きているんだから彼の思うことは意味はないだろう
伊達に年だけはかさねていない



『私は ノアの一族を止める一人ってだけでしょ』

「簡単に言えばな」

『怖くない、一度死んだ命だから』



振り返る
私の言葉にか彼は少し驚いたように私を見ていた
だから微笑んでみせる



『私はあの日一度ころされた
あの時、助けてくれた人がいる

その人がいなかったら今がないんだったら私はこうなるために生きていたんだよ クロス』



自分にも悟すように
はっきりと口に出していえば、彼は子供らしくないとわらった。



これが私の始まり


20151218




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