はじめの一歩




全てが終ってしまえばいいのになんてどれぐらい願ったんだろう。
所詮私はその程度の存在だと理解していたのに・・・
それでも誰も私を壊してはくれなかった。

私は所詮。
いらない人間で、あるのに誰も彼もが私を生かそうとする。

いっそのこと、死んでしまいたいのに・・・。


なんて、ぐるぐるぐるぐる、

考えてばっかりで、ふっと思う。
考えることが出来るということは私は生きているのだ。
生きているから、こんな風に何かを考えているんだ・・・。

なんて、そっと、重く感じる瞼を開いてみた。

薄暗い部屋。
けれど見慣れた場所でもあるそこは、孤児院の中だった。

ただし、私の部屋ではない。
一種の客間のような綺麗なそこは、私は知らない。



「目が覚めたか。」



聞こえてきた声も、正直、あたって欲しくなかった。
けれど、記憶の断片に残るソレはこの男のものだったから・・・予想はしていたけれど・・・



『・・・助けてくださったようでありがとうございます。』

「助けたわけじゃねぇ、お前が倒れてるのを拾っただけだ。」



静かにお礼を述べれば彼は口元をつり上げて返してくる。
この男、はっきり言うとつかみ所がないからさらにいやだ。

体を起こして、手首についているブレスレットを見る。
なぜか、それには謎の刻印が掘られていて、でも、今まではなかったものだった。

おそらくあの謎の攻撃のせいなんだろう。

アレに助けられた部分はあるけれどでもこれさえなければ私は死ねていたのだから、多少イラつきはある。



「お前、ソレをどこで見つけた。」



けれど、彼はこれを探していた人間なんだろう。
あのおじいちゃんのときは詮索しないでくれていたけれど彼はおそらく違う。

あんでこのタイミングでこの変化がおきたのか私にはわからないけれど・・・
これは・・・



『これは、父が私にくれたものです。』



これは、もう亡きその人が、私にくれたもの・・・といよりは、彼の遺品から私が勝手に貰ったものなのだけれど・・・
唯一、子供が持っていても編でないものを選んだつもりだったがいけなかったらしい。
何がいけなかったのかは理解しがたいが、私にとって唯一のここの家族とのつながりなのだ。



「そうか。」



彼はたった一言言って、ベットに腰掛ける。
それからタバコを出して吸い始めたが、子供の前でタバコを吸うのは止めて欲しい。
そしてこの時代にタバコがあったのかに私はびっくりしたが、しばらく、沈黙。

まるで、全てが変わっていくような感覚さえ感じてしまう。



「お前は俺が引き取った。」

『は?』

「今からお前の親は俺だ。」


だが、きっとそれは、この男のこの行動こそが原因なんだろう。
違和感の一つに着ていた服が違うこともあった。

この人は一体何がしたいのか、と、マユをひそめてしまったが、こちらを見た彼は不適に笑う。
なんだその笑みはと突っ込みそうになったが、あえて口を閉ざしておいた。



「そしてお前は、エクソシストになってもらう。」



吐き出されたエクソシストという言葉に、さらに疑問は増えていくばかりだ。

エクソシスト、悪魔祓い。



「お前が壊したアレは名称をAKUMAという。」



普通の人間が壊せないソレをお前には壊す武器がある。






あぁ、きっと私は逃げることすらも出来ないのだろう。
何故神は私を選んだのか、

ただ、ソレだけが疑問で、苦しかった。




きっと、これは決められたことなのだろうけれど…。




20150519




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