悪夢の始まり





金髪の人…私を受け止めてくれた父が事故で死んだ。
暗い暗い環境になった。

ずっとずっと、黒髪の…母は泣いていた。


あぁ、本当に愛し合ってたんだって、そう思った。



でも人は死ぬもの、
それが遅かれ早かれ、いつかは死ぬ。

そもそも、男のほうが女よりも早く死ぬのは寿命どうこうの話で仕方がない。とは思うけれど…

とりあえず、私には他人事だった。
しかも、ぱっとみ子供だしね。

パタパタと朝起きたら服を着て、家を飛び出すのが常日常だった。




そして、あったのだ。
不思議な、おじちゃんに…



「君の名はなんというんだい?」


白髪の髪。
それはどちらかといえばぼさぼさで、大きなリュックの中にはたくさんの紙が入っている。

どうしてか、その人が町の人の中でひどく浮いて見えたのだ。
だから、思わずその羽織っている布きれを引っ張ってしまった。

そうすればしゃがみ、私の頭を撫でて、そういった。


・・・名前。


『私、アイリっ』



これで、あっているかはわからないけれど…
でも、「私」の名はこれだけだから、そう言葉にすれば、「そうか、アイリちゃんか」と私の頭をまた優しくなでた。

あぁ、温かい手だ。
あの父のように、温かい手…。



「私はフロワ・ティエドールだ。
 アイリちゃんは一人かい?」



なんて、考えていたらそういわれて、うなずいた
一人、ああ、確かに外見幼女だけど、中身こんな感じだからな…あは、

そしたら何かを思いついたのか、ぽんっと手をたたくと



「アイリちゃん、しばらくおじちゃんに付き合ってくれないかい?」

『う?』

「少しだけでいい、」



立ち上がってそういった。
たぶん、悪い人ではないんだろう。

そう思ったらひょいっと抱き上げられてするりと別の場所に連れていかれた。








どこからか、意味のわからない音が聞こえたけど、たぶん耳鳴りだと思う




執筆日 20140816




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