怒れる少女


いつものごとく、突然呼び出され室長室にたどり着けばそこにいたのはまさかのリナとユウの姿。嘘だろうと、固まってしまったが、瞬きしたところで現状は変わらなかった。


「遅いぞ。マリアン。」
『…すいません。』


一瞬呼ばれた名に反応が遅れたのは、ここでそう呼ぶのはこの男だけだからだ。部屋の中に、大人が二人と十代の子供が3人。
まさかすぎないか。グラックか。あぁ、黒の教団だから仕方ないか。


『…ところで、ほかにもエクソシストは同行してくれるんでしょうね。』


吐き出した問いは、あきらかないらだちを含んでいただろう。
大人二人のうち、一人は室長で、もう一人は探索班だ。つまり、明らかに現地に行く人間、戦いにいくエクソシストは私たち3人。おかしいだろう。私たちは子供だ。
前に進んで、二人の間に入りこめば、リナが私の服の袖にすがった。その手に自分の手を滑らせて、握ってやれば指先が震えている。
あたりまえだ。現状を知っている、子供なのだから。


「何を言っているんだ。戦えない無能な人間をわざわざつけるわけないだろう。」
『それ、どういう意味で言っているわけ?』
「お前たちは神の使徒だ。戦うための駒に間違いはないだろう?なぁ?」


駒。
確かにこの男はそう言った。私たち、子供に向かって。


『はっ、餓鬼に頼ることしかできない無能が何言ってるんだか。リナ、ユウ。行こう。』


身をひるがえす。後ろで盛大な舌打が聞こえたが関係はない。私たちはやることをやるだけ。
死なないで、明日を見るために。


「アイリ…あんなこと言ったら」
『大丈夫、私は何も怖くないから。リナのこともユウのことも絶対に守るよ。』


こういう時に自分のメンタルが成熟していてよかったと思う。
この子たちを守ってあげられるから、私の何に変えても、この子たちを守れる。


「俺は守られるだけはごめんだな。」
『…ユウ。』
「お前の背中は俺が守る。いいな」
『…頼もしいね。でも一番はリナを守ること、いい。』
「もちろんだ。」



191107




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