再びであうとき


ーその姿は私を救ってくれたヒトの姿だった。




汽車の入り乱れるそこで合流するという元帥を私とレンさんは待っていた。
この後レンさんはそのまままっすぐ次の任務地に向かうときいていたので二人で会話をしながら。

妹さんの話やら、黒の教団の科学班の話やら聞いてて楽しかったし世界中のいろんな話が聞けたのもいいことだった。


『日本の江戸。』
「はい、AKUMAの巣窟になってしまっていますがそういわれる島国もあります。」


故郷、である日本がそういう場所になっているとはじめて知った。とはいっても今の私は完全なる西洋の血が入っているのだがそれでもかつてはすんでいたその場所がそんな場所になっていることに切なさを感じてしまった。戻れやしないのに。

ただ、江戸というと私が生きていた時代よりもおおよそ400年以上前のことだ。そんな前の時代に私は生まれたのか。それにしてはあの場所はとても環境が整っているし、何よりも異次元。
つまりは一種のパラレルワールドなのだろうなと思わざるをえない。


がしゃん。
なにかが落ちたおとに、私とレンさんはその音の方向を見た。そこにいた人物に私も驚いてしまったのは仕方がないだろう。


『おじい、ちゃん?』


口に出した声は、乾いていた。教団にはいって、半年。クロスと旅をして一年。孤児院で過ごした数ヵ月。
逆算すれば、大体二年ほどだっただろうか。

くしゃりと、その表情を歪めて、一気に距離が縮まれば、私はそのうでのなかに納められる。


「生きていたんだね。よかった。」


そして言われたのはその言葉だ。
彼のなかで、私の存在は確かに残っていたらしい。出会いは、たった二度だけだったのに、記憶に残る方が驚きだった。
ぎゅぅぎゅぅと子供にたいしての力としては少し強めに抱き締められて、小さくうめいてしまったのは仕方がないだろう。


「おい、ジジイ。苦しがってんぞ。」


けれど、彼の荷物の横に、黒髪の男の子がたっている。
声からして、男の子だなと思ったがぱっとみ、女の子のようにも見えてしまってどちらだろうと首をかしげてしまった。
が、「あぁ、ごめんね、あまりにも嬉しくて」とその腕が離れて、涙でぐしゃぐしゃになった顔と対面する。
こんなに、この人は泣き虫だったんだろうか。おどろきだ


「…エクソシストだったんだね。」
『はい。あのあと、 クロス…お義父さんに孤児院から引き取られました、イノセンスはこのブレスレッドです。』
「そうか、そうか。私のところには、クロス・マリアンの娘と合流して本部に戻れとだけだったから、そうか。君が」
『もちろん、血は繋がってませんけど、』


にこりと、そういって笑えば「そうか、そうか」と手の甲で流れ落ちていく涙をひたすらぬぐっている。


『ところで、そっちのこは?』


このままでは話が進まない。とそう思ってしまった私は正しいと信じたい。
首をかかしげて、いまだにおじいちゃんがおとした荷物の横で律儀に待っている黒髪君?だ。
脱線した話をもとに戻せば、彼を紹介してくれる流れ、らしい。


「この子は、私の部隊の新人君だよ。ユウくん。」
『ユウ?…日本人?』
「あー、そうだね、東洋のこかなぁ、」


彼は名を言われて、少しムッとしたらしい。ますます男か女か微妙な名前だ。
だから余計だろうか。きっと彼からすれば触れられたくないところ、というところだろう。


『はじめまして、アイリ・マリアンです。クロス部隊の。よろしくね。ユウ』
「………」
「こら、ユウくん。」
「…あぁ。」


まぁ、無愛想なのは仕方がないのか。
完全にはずされた視線に、苦笑いをして改めておじいちゃんをみる。


『フロワ・ティエドール元帥。』
「…うん。そうだね。私は元帥だ。」
『改めて、あの日助けていただいたことに、感謝を。そして神にこの再会を感謝いたします。』


あの日、おじいちゃんだと敬意を払ったヒトは、今後私の上司になる。
その意味を込めて、ひとつお辞儀をすればさらさらと重量に従って私の髪が肩を滑って揺れた。

顔をあげれば真剣な目をした元帥と、そしてユウがいる。
改めて、二人に、笑いかけた。



190208




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