光さす
「おはようございます。アイリさん」
『おはようレンさん』
廊下を歩いているとそう声がかけられた。それに対してそうレンさんに返して彼の後ろを歩いた。
昨日の今日だが、手にいれた真珠がもしかしたらイノセンスかもしれないとちょっとだけ疑っていたりもするのだが、もう少し情報を集めてからの方がいいかもしれないと教団への連絡はまだしていない。
宿を出ると、外は少し薄暗かった。やはりまだ何かありそうだなとそう思っていたら首のホルダーに入れておいた真珠がかがやきだす。
「どうしました!?」
突然のことに目をむいたレンさんだが真珠は光を放つだけで他に害はない。
気がつけば光は一点をさして輝いていた。
『行こう。』
きっとイノセンスに反応してるんだ。そう思った私は光に導かれ歩いていく
光が差す先はやはり海。
けれどかなり潮が引いていて水位が下がり、本来浮いている船がそこを地面につけ傾いていた。
『引き潮、にしては引きすぎ』
『そうですね。』
まるで天変地異だ。
一体何が起こるというのかと、早朝にも関わらずちらほらと住人たちの姿が見える。
「…何でも、昔ここから少し沖に出たところに小さな島があったそうです。大きな地震があり今は沈んでしまったらしいのですが、人魚がよく現れる神聖な場所として島は崇められていました。しかし沈んだ今では、人魚の秘宝を求めハンターが良く来ていたそうです。…今まで帰ってきた人はいないとか…」
きっとそれはレンさんが自ら集めてくれた情報だろう。心配そうに私を見下ろす彼は、私をそんな場所に送るのがきっと不安なんだ。
髪を邪魔にならないように高く結ぶ。
『わたしは大丈夫だよ』
1、2、3
あるきだせば桟橋からむき出しの浅い海底に足がついた。けれど足をついた先から地面が乾いていく。
あぁ、きっと導かれているんだろう、この光に。
『行ってきます。』
そういって笑った瞬間。遠くから波の迫る音が聞こえた。
罵声、悲鳴、いろんな声が聞こえるがスルーする。
まっすぐ、まっすぐ、光のさすその場所へ今私ができるのはそれだけなのだから。
迫ってくる津波に、ただ目を細めて体を預けた。
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何かが腐る独特の臭いに目が覚めた。こんな目覚め方をするなんて一生に一回でいい。
体を起こせば真っ暗な場所にいることがわかるが、輝く真珠の光でそうは感じられなかった。
おそらく、ここが例の祀られていた島なのだろう。
たくさんの死体
腐食しているものもあればつい最近のもの。白骨化しているものもある。餓死…じゃない…
酷い傷跡が目に見える。
誰かここにヒトがいるのだろうか、そう思ってると洞窟の奥へとのびる真珠の光
この先に、きっと求めているものがあるんだろう。それはあのAKUMAになったヒトが求めているものだ。
それがイノセンスであろうとなかろうと、確かめるまでが私たちの仕事である。
光があるだけましだと、そう思いその方向に進んでいく。
ーー