ファインダー


『んー…』


長かった…なんてものじゃない。
現代だったらもっと早く着いたんじゃないかって思うし、しいていうならば新幹線のあのふかふかな個室ソファーを懐かしく思ってしまうのは仕方ないんじゃないだろうか。
胸元のローズクロスを見せたとたん、VIP対応にはなったけれどいかせん現代と比べてはいけないっていうことはわかってるが致し方ない。
何本か列車を乗りついでの移動は肩がこる。グッと腕を上にあげて軽くストレッチをしていれば、「エクソシスト様ですか?」と背後から声がかけられて振り返った。私たちが「黒」というならば彼らは「白」なのか。大きなリュック…もとい、携帯通信機器を背負ってそこに立っているのは教団で説明を受けたファインダーと呼ばれる部隊の一人なのだろう。


『あなたは、ファインダーさんですか。』
「はい。自分はレンと申します。良かった無事に辿り着かれて。」


聞けば笑顔で頷いて名乗ってくれた彼は「レン」というらしい。こげ茶のくせっけにネコ目。身長は大体170ぐらいだろうか、高い。「少し遅れていらしたから心配していたんです」と私の手に持っていた荷物を持ってくれる。なんだ紳士か。


「長旅お疲れ様でした。本日の宿はすでにとってありますので早めにお休みがてら現在わかっていることについてお伝えします。」


なんて、そう思ったのは私だけらしい。
すぐにきりっとした表情に変わって告げられる言葉に何かが引き締まったような感じすら覚える。この人は私を「子供」扱いしないんだなと思った。まぁされたらされたで困るだけなのだが…。


「私を変な目で見ないんですね」


なんて言葉を漏らせば、一度きょとんとされて、苦笑いされた。
それから膝をついて私に目線を合わせてくれたのだがこの行動は子供に対するそれだろう。
むっとしてしまえば「ほら、そういう顔をするじゃないですか」と彼は笑った。


「クロス元帥から聞いています。貴方は酷く大人びた子供らしくない子供で、なのに変に背伸びしてるわけでもなく、それが自然なようだって」


「だったら、普通に接しても問題はありません。」と続けて告げられれば唖然とする。
確かにあいつの前では等しく自分らしくいられるが、こうもあっさり周りに触れ回れては若干困る。主に対応が。変に子供扱いされるよりも全然ありがたいのだが…





そうして彼に連れられるままに町中を歩いていく。
正直、髪色が違うからまた変な目で見られそうな気がしなくもないのだが、街の様子を知ることができるのはありがたい。
私に何か察知能力があるというわけでもないのだが。


『普通の街…』


私が住んでいたフランスは隣国だ。見慣れているようで所々違うところもある。なによりも、私の故郷はもうない。
ぽつりとこぼした言葉になにも意味はないだけれど。こんなところにイノセンスがあるなんて思えない…なんて思うのだけど、それをいったら私の住んでいた場所もそうか、


『(この町に…イノセンスがあるのは嘘じゃないかも…)』


初めてだからよく分からないけど…
だが実際、私もほぼ一般の中、平凡に生きていたのだからこういうところにあるっていうのもあながち間違いじゃないのかもしれない。そんな感じがする。

私が住んでいたあの場所も、そこまで異質な場所ではなかったから、余計そう、感じてしまうのだろうか。


20170901




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