▼ 遠い人
*-*Side Yukimura*-*
「幸村、あまり無茶はするなよ」
「大丈夫にござりまする」
父上に言われて、返事をする。
あれ以来、姉上にはあっていないから、結局初陣の行ってきますはできなかった。
せめて…会いたかった。
『まぁ、真田の父上様では?』
なのに、ふっと聞こえたその声にぎょっと顔を上げる。
そうすれば、黒髪をたなびかせ、俺と同じ赤い戦装束に身を包んだ父上の尊敬する、武田信玄公、
そのすぐ後ろに……その人の姿があった。
「久しいな、朱音、」
『はい おさしぶりにございます。』
当たり前のように笑み、そして父上と会話している。
俺には欠片の興味を示さないで…一度もこちらに視線を向けていない。
それが酷く…恐ろしく感じた。
まるで…
姉上の中から俺が消えてしまったかのように…
「っ…」
「幸村!?」
見ていたくなくて…逃げ出した。
後ろから父上の驚いたような叫びが聞こえたが姉上は…追ってきてくれさえしなかった
あぁ、本当に…
「(姉上っ)」
いつの間にか、貴女は遠い人になっていた
執筆日 20131103
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