夢を見た気がする。
懐かしくて、さみしくて、寒くて、温かい夢を…
ゆるりと目を開ければ暗い中。
最初は視線だけを動かして、体を起こせばおなかに痛み。
あぁ、これはあの時撃たれたのだと…
そう思いながら周りを見渡せば紅の鎧がこちらを向いていた一瞬ビビった。
「松永久秀…伊達の刀と武田の鎧を、庵の床の間にでも飾ろうって腹か」
「某、お館様に報せて参る。」
「その必要はねぇ。」
「なんと…」
外から聞こえる、その声に、
あぁ、何かあったんだと思った。
伊達の刀…つまり私の六爪のことだろう。
そして聞こえてきた声にあぁ…意味が分かったと…
しゅっと着物を羽織、ズボンをはいて胸をつぶすこともなく近くにあった戦装束手に手を伸ばして
「こいつはうちの不始末だ。
これ以上、武田に迷惑をかけるわけにはいかねぇ
甲斐の虎に報せたところで、どのみち家宝の鎧を持ち出すわけにもいくまい」
「…片倉様…?」
ぴたりと、手が止まる。
聞こえたのは、兵士の一人である文七郎の声だ。
不安げに震えている、
「政宗様の耳にも入れるんじゃねぇ。
あいつらは長篠で討ち死にした。
そういうんだ、いいな」
そして、吐き出された言葉が静かに胸の中に沈んだ。
ばさりと防具を一つもつけず、陣羽織を羽織ベルトを締める。
「片倉殿…」
「旦那、正しい判断だ。」
何が正しい判断だ、だよ。
全然、正しくなんてねぇ…
俺は…あの日誓ったんだ。
『なめたまねされて無視なんてできないだろ、小十郎。』
シャッと障子をあけて、そして言い放った。
執筆日 20140203