*-*Side Kojyuro*-*
ただひたすらに刀を振るう。
脳裏に浮かぶのは崩れ落ちた政宗様の姿。
そして…それを受け止められなかった俺の失態。
今のなお、あの方はその身に負った傷に苦しんでおられる…。
「政宗様…
この小十郎。お諫めことも、お守りすることも相成らず…
その思いを常に重んじることは、…」
目の前にある木や庭に置いてあるものに亀裂が入る。
それにはっとし、一度刀を下した。
今思えばあの方は幼いころより人一倍警戒心が強く…己の境界線を越えさせることはない。
「まだ、若いあなた様を死に逸らせるだけかもしれませぬ…」
それは、まるで己の死期を知っているかのような、早めているような
そんな気がしてならねぇ
おそらく、今だ俺の言葉はすべてあの方には届いていないだろう
無理に距離を詰めようとすればあの方は、消えてしまう。
そう思うほど、あの方はもろい
「…片倉殿…」
らしくもねぇ、
考えにふけっていれば背後よりかけられた声に振り返る。
そこには、俺を見ている真田の姿。
「今しがた、西のほうから妙なもの音がしたが」
「それなら配下の忍隊が確かめに向かっていころ合いにござる。」
「…そうか」
気になったこともある。
そう言葉を言えば、返され、刀を鞘にもどした。
忍
そう聞いて浮かぶのはあの猿飛とかいうやつだ。
真田と政宗様の死合を中断させた男。
それなりの力をもっているだろう。
俺が政宗様の背を守るように、あの男は真田の背を守っている。
「…心中、お察しいたす。」
「…」
「某とて…もしも目の前でお館様を…」
だがそう話し始めた真田の眼には「恐れ」が現れていた。
かつて政宗様の瞳に常にあった不安の揺らぎ。
だが、政宗様の「もろさ」とは違う。
確かな、「弱さ」だと、俺は感じた
執筆日 20140224