魔王までの道のりに、馬を走らせる。
先で何が起きるかなんて想像できないが、うまく回避すりゃ良い話しだろう。
「政宗様」
『何?』
ただ、前だけを見て走る私へとかけられる小十郎の声に、視線は向けずにこたえる。
小十郎にも考えがあるのは知っている。
「前田の風来坊ですが・・・今ひとつ、腑に落ちません。」
『体よく魔王のもとへおびき出されているとでもか?』
「ありえぬことでは」
一つの仮説。
そう、小十郎はずっとあの風来坊を気にしている
まぁ仕方の無いことだとは思うが、あいつはよそ者だ。
それに、何を考えているかわからない。
人取り橋でのことは二度と起こしたくないが、そこは私が人を動かさず、動けば済む話だ。
「家の束縛を受けぬ身とはいえ、前田の姓を名乗るもの。
前田利家は小谷与し、先だっては加賀国を与えられたと聞き及びますれば」
『Fum・・・・でも、私の邪魔をしなけりゃ、それでいい』
その言葉には、さすがに視線を小十郎に向けた。
そうすれば後ろのほうできゃっきゃしてる小猿と、上杉の旗を片手に笑う風来坊が目に入る。
この先、何が待っているか?
そんなの知るよしもねぇが、一ついえるのは
『魔王の首は、俺が獲る、
頼むぜ、小十郎。』
「承知。」
私は、天駆ける竜だから、
平和が待つ、その日まで
執筆日 20130908