いつものように両手を離して腕を組み前を見据える。
ただ、前を…
かなりの距離を走らせているからそろそろ休憩でもさせるかと考えた。
「なぁ、独眼竜の姫さん。
この前アンタの言ってた、「あいつ」って誰のことだい?」
『Un?』
なのに、だ。
いつの間にかかなり後ろに近づいていた前田。
いきなり突拍子もねぇことを言うから視線を向ける
そうすればぐらりと傾いていたからまた両手を離していたんだなと、苦笑いした。
「っと、
魔王さんを倒した後、戦いたいやつがいるんだろう?」
『…あぁ…まぁな』
「いい顔、してたぜ。
それが戦と喧嘩の違いってやつだよ、」
にこりっとさわやかな笑みを浮かべて私にいう。
まったくもって、なんでそんな風になったのかはわからないが…
でも…うん、興味がないわけじゃない
「…」
ただ、私はあいつが皮肉にも昔の己のようになりそうで怖い、
あの強さは何かにしがみついているから保たれているものだ
けれど、もしそれを失ったらおそらくすべてにおびえるんだろうな
まぁ、そんなことになっていればすぐに世に喰われる。
それだけだ
切り開こうとする者、
弄ばれる者、
ただ、身を任せる者
それぞれの運命が、せめぎあう刃とともに錯綜する!
また、どこかで悲しみの歌が流れ始めた
執筆日 20130906