『あ、あの…!』



あわてたような千代の声が聞こえた。
そんな声とは関係なく、開かれた扉。

部屋の中…私と秀吉様を視界に移した千代は泣きそうになっていて…


あぁ、秀吉様にも記憶があると思っているからだろうか、
本当に哀れな女だ。



「よく来たな、千代。」

『え…』



だが、秀吉様の言葉に驚いたように千代は目を見開いた
秀吉様の声も、ひどく優しい声色で、


小さく「あ、え・・」と言葉を漏らした千代は視線を下に向けて、『お久しゅう、秀吉公、』と悔いを持ったままのその声でぺこりと頭を下げた。



そのまま諭されるまま半兵衛様と秀吉様の座るソファーの対においてあるソファーへと座る。
テーブルに置かれた紅茶が甘い香りを部屋に広める。
けれど、千代は視線を下に向けたまま、膝の上で両手を握り、その手は震えていた。




「お前も小さくなったものだ。」




それに、何もできない私だったが当たり前のように秀吉様はそういった。
秀吉様の声にはっとしたように顔を上げた千代の表情は不思議そうな顔をしていて、

けれど、言葉につまったようにまた視線を泳がす。



「我にできなかったことをよくやった」



ただ、秀吉様の言葉に握っていた手からゆるりと力が抜けたのが分かった。
あぁ、やっと気が抜けたかと…



「それでね、千代君。
 君に前世の記憶があろうとなかろうと、ひとつ確かめたいことがあるんだ。」




けれど、当たり前のように半兵衛様は話し始める。
それに今度こそ意味が分からないと千代の眼には不安そうな色が見え隠れして、けれど『私に…?』とい言葉を紡いだ





*-*闇の巡り*-*


(そう君に、

 それから、三成君に)

(私も、ですか?)



執筆日 20130815



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