普通、停学中の生徒には連絡を取ったりあったりしてはいけないが、片倉殿に政宗殿の意を伝えれば千代殿の住所を教えてくれた。


どうやら片倉殿は政宗殿より話をきいていたらしい。


学校が終わり、政宗殿から言われたとおり千代殿の家へと向かえば中から出てきた千代殿はとても驚いた。

・・・が苦笑いをすると、『片倉先生は酷い人だな。』といって俺を家へと上げた




『何か飲むか?』

「い、いえ、大丈夫にござる。」



けれど、極めて千代殿は自然だった。

昔は敵同士・・・

どのようにすればよいかちう俺の考えとは裏腹に、カランっと乾いた涼しげな音をたてて置かれた麦茶。

はっとして顔を上げれば『そんなものしかなくてすまない』と謝られてしまった。



「お気遣い、感謝いたしまする」

『相変わらず固いな、真田は。』

「い、いえ・・・そんな・・・」

『普通にしてくれ、
 私は家康ではなく、千代なのだから。』



けれど、言われた言葉に、少なからず驚いたが微笑んでいる千代殿に、ほだされてしまう。

くすくすと笑って、すぅっと瞳を開いた千代殿は酷く、美しく・・・



『そうは言っても、私がお前を殺したようなもんだからな。』

「そんなことはない!!」



それでも、自分のことを攻め続けている
それが許せなくて、ダンっとテーブルを叩いて叫んだ。

きょとんっとそんな俺の反応にぱちぱちと瞬きをした千代殿は、寂しそうに笑った。



「っ俺は・・・っ俺は・・・!!」




俺は、貴殿の・・・ことが・・・






『真田?』

「っ幸村でいい、
 俺は、その・・・」

『ふふ、どうした?』

「貴殿が、貴殿が・・・っ」



思わず、口走ろうとしてしまったその言葉を、止めた。

その表情は、俺が望む・・・その表情で・・


あぁ、そうか・・・




「貴殿が、悲しむ笑みは・・みたくない・・・」



もし、俺のこの言葉が貴殿を苦しむの為だったら・・・
この思いは封じ込めよう




「石田殿と、一度、話ってはどうですか」



紅の協力

《いや・・・だって・・・》

(あの時も、石田殿の目には貴殿を殺したいと思う気持ちだけではない・・・)



(貴殿をいとおしむその色を孕んでいた・・・っ)




執筆日 20130712



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