千代を侮辱する声。
それに苛立ちがツノって行くのに対し、千代の肩に置かれた男の手。

その汚らしい手で・・・千代に触るな・・・

叫びそうになったが、その前に、男の苦しげなうめく声が聞こえる。
周りの男達の驚く声、

千代が・・・殴ったのだ、
男を・・・・


倒れている男の腹に足を置き、だんだんと力を加えて行く千代の姿に、「あの姿」が重なる。



『儂の大切な友に、何をしている・・・』



そして、千代の口から吐き出された言葉は低く、殺気を含んでいる。
手にしていた鞄を千代は足元の男にたたきつけた。

小さくうめいたが、元々気絶している。
私を囲んでいる男は、千代を異常と見たらしい。



千代は一度息を吐くと、







「っいえ・・・やす・・・」


昔のようなその構えに名をよんだ。
私の声は、どうやら千代には届かないらしい。

だが、やめろ・・・



お前は・・・




お前は・・・



『三成』



静かに、千代が私の名を呼んだ。
はっとして千代を見れば街灯を背景に、その表情は見えないが




『儂がお前を守るから』



それは私の良く知る声だった


執筆日 20130623



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