「千代、こっちへ来い。」
『ん? なんだ三成』
私が呼べば無防備に近づいてくる女にため息すらでてこない。
戦装束を身に纏い、完全に防具で身を固めている。
いまさらながら、あの頃は簡単に殺せたと思うが、元々私は千代を憎しんでなどいなかった。
私のもとにきた千代は首をかしげて私を見上げている。
「・・・これをやる。」
『・・・結い・・紐?』
そんな千代に差し出したのは、藤色よりも少々濃い紫。
それをみて千代は不思議そうにしていたが、嬉しそうに笑い『くれるのか?』と数回目を瞬きさせた。
「・・・そう、だ」
『っありがとう、三成!』
それに、小さく視線をそらしつつ言えば千代は嬉しそうに私から結い紐を受け取りそして確認するように伸ばした。
そのあと首にかけて首飾りのように結おうとしているらしい。
だが、訓練中だった千代の手には防具。
なかなか結べず難しい顔をしていた。
「貸せ」
『え、へへ、すまない三成。』
不恰好な縫い目を解き刑部が教えてくれた結び方で結ぶ。
千代から『三成は器用だな!』といわれたが「貴様が不器用なだけだ」とかえいsた。
数日後、
礼だと言って私に同じような向日葵よりも少し明るい色の結い紐を差し出してきた。
私は女々しいと、ソレを捨てた。
千代の目の前で捨てた。
千代は、笑っていただけだったが・・・
『な、なんだ?
そんな怖い顔で・・・』
休み、だが次の日には学校に復帰した千代の鞄には古びた紐がくくりつけたあり、
首には、藤色の紐があのときのように結ばれている。
大分形も悪く結び目は歪んでいるが・・・
中央には徳川の三つ葉葵の紋の飾り。
「それはなんだ。」
『え、あ・・・これか?』
私の問いに、恥ずかしそうに千代は笑った。
そっと手に触れて、くすくすと懐かしそうに・・・
『毎年・・・な・・・今ぐらいの時期に大阪に戻っているんだ。
あ、内緒だぞ!』
「・・あぁ」
『すまない。
まぁ、毎年行くから行き着けになった老舗があってな、
そこにあったんだ、 これが・・・
はは、ほら、私の姓は”徳川”だろ?
だから、懐かしくなって、ついつい買ってしまったんだ』
そこまで言って、千代は黙った。
そして、少し考えた後鞄を浅利、長方形の箱を出す。
それを私に差し出した
『っ”石田三成”・・・わ、儂から・・だ』
そして、「儂」と昔の追うな一人称で私にソレを持たせ走り去った。
・・・家康・・?
「・・・いや、まさか、な・・・」
*-*闇の記憶*-*
(主のその箱はなんぞ?)
(千代からの土産だ)
(ヒヒ、よかったなぁ三成)
(・・・あぁ)
執筆日 20130617
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